ロータリーエンジンも搭載! 隠れた名車シトロエン「GS」の元ネタとは?
シトロエンの名車である「2CV」と「DS」の間を補完するモデル「GS」がデビューして50年。隠れた名車「GS」の誕生にまつわるストーリーを紹介しよう。
「GS」は、ロータリーエンジンも搭載していた!
2020年は、自動車界における「アニバーサリーイヤー(記念の年)」の当たり年といえるだろう。自動車史上に冠たる名作たちが、記念すべき節目の年を迎えることになった。
自動車界きっての個性派として知られるブランド「シトロエン」の真骨頂ともいうべきスタイリングやメカニズムを初めて小型車に導入したモデルとして、今なお全世界のエンスージアストから愛される歴史的名作「GS」もそのひとつである。
シトロエン「SM」と同じ1970年にデビューし、今年でちょうど50歳となったGSは、先ごろ本国デビューした新型「C4」でもオマージュが捧げられた、エポックメイキングな1台といえるだろう。
そこで今回は、VAGUEでもその誕生にまつわるストーリーを紐解き、シトロエンの歴史に輝く1台への敬意を表することとしよう。
●2CVとDSのギャップを埋める、本格的コンパクトセダン
第二次大戦後のシトロエンは、1948年に登場した「2CV」と1955年にデビューした「DS」シリーズという、自動車史に冠たるアヴァンギャルド的名作を上梓。それぞれに大きなヒットを博していた。
しかし2CVはフランスの「民具」として、徹底的な合理主義のもとに開発されたベーシックカー。こなたDSシリーズは2リッター級の中型車で、フランスでは政府高官やエグゼクティヴたちも愛用す、かなりの高級車。シトロエンの乗用車レンジを支えるふたつのモデルの間には、ぽっかりとしたギャップが生じていた。
もちろん、当時のシトロエン首脳陣も手をこまねいていたわけではなく、1961年には「アミ(Ami)」、1967年には「ディアーヌ(Dyane)」をデビューさせてはいた。しかし、アミ/ディアーヌともに2CVのコンポーネンツを踏襲して、より乗用車らしく仕立てたモデル。エンジン排気量は最大でも652ccに過ぎない。
そして前者は約184万台、後者も約140万台が生産されたものの、1960年代中盤以降のフランス、そしてヨーロッパにおいてもっとも需要の大きかった「1000−1300ccクラスの小型車」というボリュームカテゴリーには参入できないでいたのだ。
その窮状を打開すべく、1000ccオーバーの本格的ファミリーセダンとして、1960年代半ばから開発に着手されたのが、のちのGSである。
同じ水平対向エンジンを持つFF車であることから、とくに日本国内では「スバル1000の影響を受けた」との見方もあるようだが、スバルが水冷OHVだったのに対してGSは空冷SOHC。エンジンと駆動系メカニズムは2CVとその係累、あるいは1965年にシトロエン社が傘下に収めたフランスの老舗「パナール」にて戦後に作られた2気筒FF車たちのノウハウから培われたテクノロジーの発展形と見るのが自然と思われる。
なによりの違いは、シトロエンの象徴ともいうべき異彩のテクノロジー「ハイドロニューマチック」システムを小型大衆車に盛り込んだことだった。
サスペンションは、前輪がダブルウィッシュボーン、後輪はラゲッジスペースの低床・平床化を期したトレーリングアームとなっている。
スプリングは前後ともに油圧制御エアサスペンションのハイドロニューマチックとされ、自動車高調整機能と高いロードホールディング、快適な乗り心地を得ている。
加えてこの時代の大衆車としては珍しく、商用バージョンを含めたすべてのGSが4輪ディスクブレーキを装備(フロントはインボード)していたのだが、フットブレーキの配管と倍力装置は、一般的な個別配管とマスターバックではなく、DS同様となるハイドロニューマチックと油圧回路を共有していた。
つまり初期モデルではわずか1015cc、リアにハッチゲートを設けた最終進化型の「GSA」でも1.3リッターに満たない小型車に、DSシリーズとともに全世界を驚嘆させたシステムを奢ったことになるのだ
そして、全長4120mm×全幅1608mm×全高1349mm、ホイールベース2550mmと、当時の小型車としてはかなり大柄なボディサイズも、DSシリーズで提唱されたフィロソフィをそのまま下方移行させたことを示す、ひとつの証といえるだろう。
ちなみにGSでは、当時シトロエンが西独NSU社との提携関係のもとに開発していたヴァンケル(ロータリー)エンジンを、空冷フラット4に代えて搭載した「GSビロトール」を1973年からリリース。しかし、発売直後から第一次オイルショックに見舞われたことに加えて、エンジンの決定的な耐久性不足が露呈したこともあって、わずか847台の生産に終わったという。
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