ロータリーエンジンも搭載! 隠れた名車シトロエン「GS」の元ネタとは?
ピニンファリーナの影響を完全否定!
シトロエンGSというモデルの先鋭的なコンセプトを端的に表している、最大の要素として挙げるべきは、6ライト/ファストバックのボディスタイルだろう。
●ボディデザインにまつわる異説
GSのボディスタイルは、エアロダイナミクスが現在ほど重要視されていなかった1970年代初頭のものとは思えないほどに、先進的にして、美的観点からも魅力的である。
先般、最新鋭のクーペSUVとして誕生した新型「C4」にもモチーフが引用されたと謳われるデザインを担当したスタイリストは、ルノー「25」やアルファ ロメオ「ES30系SZ/RZ」のデザインを手掛けたことでも知られる、ロベール・オプロンだった。
オプロンは、長らくシトロエンのデザインチームを率いていた天才フラミニオ・ベルトーニが1964年に没したのちに、32歳の若さでシトロエンの主任スタイリストに就任。このGSおよび同年デビューの「SM」の成功によって、一流デザイナーとして認められることになった人物である。
1999年に、米国を中心に開催された「カー・デザイナー・オブ・ザ・センチュリー」アワードにおいても、20世紀を代表する自動車デザイナー25人中のひとりとしてノミネートされるなど、その名声は誰もが認めるものといえよう。
ところが彼の出世作となったGSについては、デビュー当初からあるコンセプトカーとの類似が指摘されていた。
イタリアのカロッツェリア、あるいは世界の自動車デザイン界の盟主ともいわれるピニンファリーナが、もともと自社で英BMCグループに提供した作品である「オースティン/モーリス1800」、および「オースティン/モーリス1100(ADO16シリーズ)」をベースとして実験的に製作したデザインスタディ「BMC1800アエロディナミカ」および「BLMC1100アエロディナミカ」である。
この2台のスタディは、ピニンファリーナの主任スタイリストとして長らく活躍し、フェラーリの名作の数々を生み出してきた名匠、レオナルド・フィオラヴァンティがミラノ工科大学生時代に起案し、ピニンファリーナの入社テスト課題として提出したデザインドローイングが発端となっていたという。
ただ一連の「アエロディナミカ」については、フィオラヴァンティの後輩スタイリスト、パオロ・マルティンの作であるとする説もあるそうだが、いずれにしてもピニンファリーナの名義で構築されたコンセプトであることに変わりはないだろう。
ところが、今世紀に入った時期にさるメディアがオプロンにインタビューした際、彼はシトロエン「GS/CX」とピニンファリーナ作品との因果関係をはっきりと否定している。
その傍ら、ピニンファリーナおよびフィオラヴァンティの見解では、シトロエンGSおよび1974年にデビューしたシトロエン「CX」は、2台の「アエロディナミカ」の影響を受けているだろうと、明確に主張しているようだ。
しかし第三者としてこれらの作品を見直してみると、双方の意見ともに一理ある気がする。ピニンファリーナ-フィオラヴァンティ(orマルティン?)の「アエロディナミカ」は、6ライト/ファストバックのセダンスタイルのパイオニアであり、影響を与えたのはシトロエンGS/CXだけではなく、「ローバーSD1」や「シムカ1308」、さらには後年にピニンファリーナが再び手掛けた「ランチア・ガンマ」など、多岐にわたっている。
そしてオプロンのシトロエンGSに関しては、フロントマスクやリアホイールを隠したデザインに見受けられる、名作DSから継承されたシトロエンらしさ。そして、フランス的なエスプリとエレガンスを同時に実現していたと評されている。
GSは見まごうことなき「シトロエン」であるとともに、時流を遥かに先んじた1970年代の自動車デザインの傑作と評価されていたのは、否定しようのない事実なのである。
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