衝撃!トヨタ「クラウン生産中止」報道、クラウンが抱える悩み…その背景に「日本向けセダン」
日本の高級車の代名詞ともいえるトヨタ「クラウン」が、現行モデルをもって生産中止となるという報道がなされました。その背景にはどんな事情があるのでしょうか。
クラウンの低迷は世界的な需要の変化
2020年11月11日早朝、中日新聞から衝撃のニュースが飛び込みました。トヨタ「クラウン」が現行モデルをもって生産中止となり、2022年からSUVスタイルの新モデルとして生まれ変わるというのです。

いうまでもなく、クラウンはトヨタのみならず日本を代表する名車です。その歴史は古く、1955年に初代が登場して以来、15代目となる現行モデルに至るまで、高級車の象徴的存在として君臨してきました。
2020年11月2日には一部改良も施され、さらに商品力を増したなかでの生産中止報道は、多くの人を驚かせTwitter上で「クラウン」がトレンド入りするほどでした。
一般的に、新型モデルが発表されて市場に出回る頃には、次期モデルの開発がすぐに始まるといわれています。
使い勝手などの機能面は、現行モデルの反響を見たうえで次期モデルへと反映させることになりますが、パッケージングやパワートレインなどクルマの骨格や基本性能に関わる部分については、かなり早い段階で方向性が決定されることになります。
そのように考えると、すでにトヨタ内で次期クラウンについての議論が進められていること自体は不思議ではありません。
また、トヨタの「お膝元」である愛知県を拠点とする中日新聞が「クラウン生産終了」の第一報を伝えたことで、まったくの事実無根ということはないと考えられます。
では、なぜトヨタはクラウンを生産中止するのでしょうか。そこには、クラウンが抱える悩みがあるようです。
前述のとおり、クラウンは日本を代表する高級車として、長きにわたって日本の高級車市場をリード。2018年に登場した現行型も、発売から約1か月で月販目標の4500台の約7倍となる約3万台を受注するなど、好調な立ち上がりをみせていました。
しかし、2020年度上半期(4月から9月)の軽自動車をのぞく新車販売台数ランキングでは、前年比53.4%となる8691台で31位となっており、販売状況に陰りが見えてきています。
そもそもクラウンは、約半数が法人による購入という特殊な事情のあるモデルです。大手企業や官公庁、ハイヤー・タクシー会社などは、極端にいえば「新型クラウンが出たら買う」というような指名買いが多いとされているほか、個人ユーザーでも「クラウン」という絶対的なブランドを信頼して購入するケースも多く、発表直後の販売台数が伸びやすいモデルでもあります。
しかし、法人需要も「アルファード」などの高級ミニバンに移行しつつあり、将来的な需要の拡大は見込めない状況です。
さらに、問題は新規顧客の獲得です。現行クラウンは、ドイツのニュルブルクリンクで磨いた走りの良さを徹底してアピールするなど、アグレッシブなスポーティセダンとしての性格を強調していることから、個人ユーザーへ向けてのアピールであることを意味しています。
ユーザーの高齢化が課題となっているクラウンにとって、若々しいイメージをもたせる戦略は必然といえますが、直近の販売台数の推移を見ると、その戦略が成功しているとはいえないようです。
クラウンの販売台数が不調の背景には、世界的なSUV人気という昨今のトレンドがあります。
セダンに比べて居住空間を広くとることができ、なおかつ現代的なデザインであることから、それまでクルマの基本形とされていたセダンの役割を奪いつつあります。
実際に、トヨタのなかでも「ハリアー」は「RAV4」といったSUVは好調な販売を記録。つまり、本来クラウンが囲い込みたかった30代から40代のユーザーは、SUVモデルへと関心を寄せているのです。
巨大市場である中国や北米などでは、依然としてセダンには一定の需要があります。ホンダ「アコード」などはそうした地域を主力市場としているため、日本での販売が与える影響は相対的に小さくなります。
しかし、クラウンの場合は、中国でも販売はされているものの、基本的には日本市場がメインであり、日本の販売状況がモデル存続に大きく影響を与えることになります。
短期的に見れば、魅力的な装備を搭載した特別仕様車を投入したり、多額の宣伝広告費によるマーケティング活動をおこなうことで、販売台数を刺激することはできるかもしれません。
しかし、中長期的に見たときには、日本国内でセダン人気が大きく回復することは想定しにくく、また人口も減少傾向にあることから「日本国内市場向けセダン」というカテゴリーの存続自体が難しいという判断になったものと考えられます。







































