なぜ新型「ハマー」はEVとして復活!? 歴代ハマーはどんなクルマだったのか

ハマーがEVで復活した理由とは?

 市場からのラブコールによって生まれ、代を重ねつつも、ルーツとなる軍用車のイメージを守り続けたというのがハマーの歴史だ。

「戦場を駆け回る軍用車を自分の愛車にできる!」という、ハマーの名が持つイメージは強い。同じ軍用車にルーツを持つ「ジープ」と同様に、そのブランド的な価値は大きいといえるだろう。昨今の世界的なSUVブームのなか、そうしたブランド価値を使わない手はないというのが、ハマー復活のひとつの理由だ。

新型「ハマーEV」。2021年に発売予定だ
新型「ハマーEV」。2021年に発売予定だ

 また、アメリカにおけるピックアップトラックの存在感が、日本人には考えにくいほど大きいのが、ピックアップトラックとしてのハマー復活の理由となるだろう。

 かの国で、過去40年近くにわたってもっとも数多く売れているクルマは、フォードのピックアップトラック「F1500シリーズ」なのだ。

 驚くのは、普通の乗用車も合わせてのランキングでF1500がトップに君臨し続けていること。当然、巨大なピックアップトラックは価格も高い。高いクルマが一番多く売れるのだから、ビジネス面での旨味も当然大きい。これもハマー復活の理由のひとつとなる。

 そして最後は、環境問題に対する対応だ。

 巨大なピックアップトラックは、当然のように燃費性能が悪い。しかし、環境対策のためにCO2排出量の削減は世界的な使命となっている。

 そこで導き出された対策が電動化だ。しかも、完全なるEVであれば、CO2排出量をゼロにできる。

 その先陣を切ったのが、テスラのEVピックアップトラック「サイバートラック」だ。ルックスが斬新なだけでなく、なんと発表数日で20万台以上の予約が殺到したという人気にも驚かされた。この現象は、それだけアメリカではEVピックアップトラックへの注目が高いことの証明にもなるだろう。

新型「ハマーEV」のインパネ
新型「ハマーEV」のインパネ

 また、GMは自社開発の新型バッテリー「アルティウム」と次世代グローバルEVプラットフォームを開発している。

 これは、前輪駆動の乗用車から後輪駆動車、4WD車まで幅広い車種に対応できるというフレキシブルな技術だ。これまで独自にEVを開発していたホンダが、自社技術を投げ出してGMと北米におけるEVプラットフォーム戦略を提携したのも、このアルティウム&グローバルEVプラットフォーム技術があったからに違いない。

 つまり、ハマーEVは、EVとしての技術的な土台が先に出来上がっており、その展開のひとつとして選ばれたのではないだろうか。ハマーが先ではなく、EV技術が先というわけだ。

 そういう意味でハマーEVが、EVとして登場したのは、ごく当然のことであったのだろう。

 逆に、純粋なる内燃機関の巨大SUVは、この先、生存が厳しくなる一方だ。ハイブリッドから、プラグインハイブリッド、そしてEVという進化が必須となる。ならば、一足飛びに、最初からEVとして開発してしまおうというGMの考えも理解できるのはないか。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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