全長2mで「4人乗り」! めちゃ小さい「BIGA」再び実車展示! 斬新「カクカクデザイン」の“ハコ型”ボディを採用! 便利な「街乗りモデル」提案したジウジアーロの「画期的モビリティ」とは
「LUUP」のような手軽なモビリティのシェアリングサービスが普及し始めていますが、ジウジアーロが創設した「イタルデザイン」は、1992年に超小型自動車のシェアリングサービスとそのクルマ「BIGA」を提案していました。
現在の「シェアモビリティ」のさきがけ
近年日本では、交通渋滞解消・高齢化・さらには脱炭素社会への対応として、既存のクルマよりも小さく環境負荷が少ない超小型モビリティが注目を集めており、都市部に限らず、地域の移動手段としての導入が期待されています。
このような小さなクルマを用いた新しい交通手段の提案は古くから行われており、とくに都市部におけるコミューターのコンセプトカーは数多く存在します。
それが1992年のトリノ・ショーで発表された、画期的なシティコミューター「BIGA」。
フォルクスワーゲンの初代「ゴルフ」などを手がけた世界的なカーデザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロが興したカロッツェリア「イタルデザイン」によるものでした。
近年、歴史の古い旧市街など狭い道が多い欧州の都市では、クルマの進入規制が進んでいます。
しかしその際、単なる規制を行うだけでなく、公共交通や小型モビリティ・自転車など代替交通を用意しなければなりません。
街中の各所にシティコミューターを配置するにしても、それは大規模なインフラ整備となり、導入台数が多くなることが予想されます。そうなると、財政の問題や導入方法などの問題をクリアしないとなりません。
しかしBIGAは、都市交通への大量導入を可能とする具体的・現実的な設計が盛り込まれていました。
BIGAは個人所有ではなく、街中にあるステーションでBIGAを借り、別のステーションに返却することも可能な「共同所有の乗りもの」を想定しています。
利用の際は事前登録を行い、発行されるカードを使ってBIGAにアクセス。時間単位で発生するレンタル料は、クレジットカードで支払うとされていました。
BIGAは全長約2m、全幅は約1.5mしかない完全な箱型の車体を特徴としました。移動手段として必要な装備は最小限ながらも、サイド・リアのウィンドウグラフィックやボディ下半分をグレー樹脂で覆ったデザインは、都市交通として高い洗練性を持っていました。
驚くことに、この小さな車体にドライバー1名と乗員3名の乗車が可能です。側面にはドアがなく、乗り降りの際は後部にある横ヒンジのハッチを介して行います。
ステーションや街中では歩道に対して直角に停車することで、安全に歩道から乗降ができます。床面は低く、車椅子の乗り込みも容易です。
また、車体横のドアを開閉する必要がないため、ステーションではBIGA通しをぴったり横付けができ、駐車スペースの削減も実現していました。
パワートレーンは、小型のディーゼルエンジンを用いたハイブリッドシステムが考えられていました。
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BIGAの発表から30年以上が経った2024年9月、イタリアで開催された「トリノオートショー(Salone Auto Torino)」では、このBIGAがふたたび姿を現しました。
昨今、日本でも導入が進むシェアサイクルや電動キックボードのように、時間ごとに利用料金が決まる「共同所有の乗りもの」という概念を、BIGAはすでに盛り込んでいたのは驚きです。
ふたたびBIGAのような斬新なデザイン・発想の車両の登場にも、期待したいところです。
Writer: 遠藤イヅル
1971年生まれ。自動車・鉄道系イラストレーター・ライター。雑誌、WEB媒体でイラストや記事の連載を多く持ち、コピックマーカーで描くアナログイラスト、実用車や商用車・中古車、知られざるクルマの記事を得意とする。
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