「ヤリス」ベースのハイトワゴン登場か!? なぜ派生車を次々投入? トヨタが目論む戦略とは
カローラクロス追加でトヨタのSUV拡充へ
今後国内での登場が予想されるトヨタ車として、SUVの「カローラクロス」が挙げられます。
タイではすでに販売されており、ボディサイズは全長4460mm×全幅1825mm×全高1620mmです。
ホイールベースは2640mmなので共通のプラットフォームを使う「C-HR」と同じで、ボディサイズもC-HRに近く、エンジンは1.8リッターガソリンと同ハイブリッドが用意されています。
トヨタのSUVにはさまざまなモデルがラインナップされており、コンパクトサイズでは、都会派のヤリスクロス、ワイルド系の「ライズ」、ミドルサイズでは、都会派のC-HR、ワイルド系のカローラクロスがあります。
ラージサイズでは、都会派の「ハリアー」、ワイルド系の「RAV4」、本格オフロードの「ランドクルーザープラド」、さらにはキングサイズのオフロード車として「ランドクルーザー」が存在しています。
カローラクロスは、ボディサイズなどの数値はC-HRと重複しますが、SUVは同じサイズでも複数の持ち味を表現できます。
とくにSUVは人気の高いカテゴリなので、都会的なヤリスクロスと野性味が伴うライズは、両車ともコンパクトなサイズが人気を集めて好調に売れています。多少の競争は生じても、好みに応じて選び分けられるのが魅力です。
そうなると都会的なC-HR、野性的でオーソドックスなSUVのカローラクロスも両立が可能です。C-HRの外観は5ドアクーペ風で、SUVとしてはボディサイズの割に後席と荷室が狭いため、むしろカローラクロスがミドルサイズSUVの主力になるといえるでしょう。
2.5リッターのハイブリッドを用意するラージサイズSUVには、すでにハリアーとRAV4が用意されています。従ってカローラクロスが登場すれば、各サイズに、都会派とワイルド系を用意できるわけです。
このように売れ筋のカテゴリに、基本部分を共通化した複数の車種を用意するのは、昔からトヨタの得意ワザでした。
セダンが好調に売れていた2000年頃には、コンパクトなプラッツやベルタ、ミドルサイズの「ビスタ」、「アルテッツァ」、「プログレ」、ラージサイズの「マークII」3姉妹車、「アリスト」、「ウィンダム」という具合に豊富にそろえていました。
このうちの数車種は、いまでは後継モデルがレクサスブランドで扱われていますが、売れ行きはトヨタブランド時代が多かったです。
売れ筋のコンパクトカーとSUVについては、今後もラインナップを充実させる余地があるでしょう。そして、そのうえで不人気車や姉妹車が廃止されることになります。
2020年5月以降、トヨタではすべての販売系列で全車を扱うようになりました。2020年9月には、「ヴェルファイア」の登録台数が「アルファード」のわずか12%まで落ち込むなど販売格差が拡大していますが、好調に売れる車種には弾みが付いています。
そしてそれまでは、たとえば「カムリ」から「クラウン」に上級化する場合、基本的には別の販売店で購入する必要がありましたが、いまは全店が全車を売るので販売店を変える面倒はありません。
同様にスペース重視の車種も、ルーミーからヤリスベースのハイトワゴン、シエンタを経て、ヴォクシーやアルファードという乗り替えも起こり得ます。
つまり今後のトヨタでは、ダウンサイジングというメーカーや販売会社にとってマイナスの流れを食い止め、上級モデルを提案しやすくなり、それも踏まえた上で、ヤリスのハイトワゴンやカローラクロスが設定されるのです。
かつてのカローラからコロナ、マークII、クラウンという上級移行は、トヨタ的な商法と揶揄されたこともありますが、ユーザーは自分のサクセスを愛車の乗り替えに反映させて喜びを実感することができました。
いつの時代でも、クルマは夢を持てる対象であって欲しいです。そこに向けたチャレンジは、まさにいまこそ必要とされているように思います。
これはトヨタに限った話ではありません。カーライフにはストーリーが大切で、その欠如が、昨今の販売不振の一因になっているのです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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