なぜ新型フェアレディZやジムニーは歴代車がモチーフに? 原点回帰する新型車が増える訳
若者のクルマ離れもひとつの要因に?
歴代モデルをモチーフに採用する理由として、ユーザーの高齢化もあります。スポーツカーには若者向けの商品というイメージがありますが、実際は意外に高齢化しています。
価格が高くなった影響もあり、50代から60代が中心的な年齢層になる車種も多いです。
そうなるとフェアレディZであれば、初代モデルに憧れたり、あるいは所有した経験のあるユーザーが主な対象になります。その気持ちに訴えることも狙って、歴代モデルをモチーフに選んでいるのです。
海外のスポーツカーでは、アメリカ車のフォード「マスタング」やシボレー「カマロ」も、2000年以降のモデルは初代モデルをモチーフにしています。
この2車種もフェアレディZと同様、1960年代に初代モデルを発売して、割安な価格により好調に販売され、スポーツカーの普及を促進する大切な役割を果たしています。アメリカにおいても、初代モデルの現役時代を知っている人達をターゲットとしたのです。
海外メーカーの輸入代理店では、次のようにコメントしています。
「海外でも日本と同じように若年層のクルマ離れが進んでいます。スポーツカーのユーザーは高齢化しており、新型モデルが初代モデルに似たデザインを採用するようになりました。
また中高年齢層から見れば懐かしいボディスタイルが、若い人達にとっては新鮮に見えることもあります。単なる懐古趣味ではなく、新しい価値を与えることで、新たな需要の掘り起こしも狙っています」
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最近は売れ筋カテゴリーのSUVでも、原点回帰のニーズが高まっています。
歴代モデルがモチーフではありませんが、人気の高いトヨタ「RAV4」や「ライズ」は、外観が古典的な悪路向けのSUVを連想させます。
この人気動向は、ジムニーの好調な売れ行きとも合致するでしょう。輸入車ではジープ「ラングラー」の販売に弾みが付き、ジープブランドの最多販売車種になりました。
歴代モデルをモチーフにしたクルマが増えた背景には、見方を変えると、開発コンセプトやデザインの行き詰まりもあるでしょう。
売れ行きを伸ばせる新しいアイデアが生まれず、結果的にクルマ造りが原点に戻り、その表現手法として歴代モデルがモチーフになっています。
歴代モデルに偏らず、進化する先鋭的なモデルと歴代モデルをモチーフにした車種の混在する状況が、ユーザーにとって好ましいのかも知れません。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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