「スポーツカー」共同開発で活路? 新型モデルが次々登場も自社開発車が減った理由とは
共同開発は拡大傾向、単独開発は難しい?
86/BRZの成功をうけたトヨタは、その後BMWとの共同開発で「スープラ/Z4」を世に送り出します。
共同開発を持ちかけたのはトヨタだったといいます。そして2社でポルシェ「ケイマン&ボクスター」と十分に戦える超ショートホイールベース、ワイドトレッドのシャシーを共同でつくりました。
もちろんエンジン&トランスミッションといったパワートレーンとサスペンションなどは共通のものを使用します。ただし、エンジンやミッションの制御は大きく異なっています。
当初から両社の打ち合わせのなかで、「互いに作りたいクルマを明確にしてから、共通化できる部分を模索する」という大前提が出来上がっていたとされています。
つまり、「プラットフォームや部品を共有化することありき」でクルマをつくるのではないということです。
その結果、スープラ/Z4は、86/BRZほど見た目も性格も似ていない、一見するとまったく別のモデルとして誕生します。
しかし、プラットフォームや部品の共有化によるコストメリットの恩恵は受けられているため、共同開発の理想的な姿といえるかもしれません。
また、世界最量販オープンスポーツであるマツダ「ロードスター」とイタリアのアバルト「124スパイダー(フィット124)」の共同開発も話題となりました。
この124スパイダーは、マツダの広島工場で生産されていましたが、単にマツダのロードスターにアバルトのエンブレムを冠しただけのクルマではありません。
最大の違いは搭載エンジンで、1.4リッター直列4気筒ターボは170馬力/25.5kg.mを発揮、パワー&トルクでロードスター圧倒します。
ただし大人2名分ほど重くなり車重1130kgとなり、価格は100万円以上高価です。
スポーツカーに限らず、近年の自動車開発では「いかにプラットフォームや部品を共有化するか」が大きなテーマとなっています。
製造業には、「生産量が増えれば増えるほど、ひとつあたりのコストは下がる」という「規模の経済」と呼ばれる原則があるためです。
しかし、SUVやコンパクトカーと比べて絶対的な販売台数が少なく、かつ専用部品の多いスポーツカーでは、同一メーカー内でプラットフォームや部品を共有することが難しい場合が少なくありません。
もし、自社だけでスポーツカーを開発すると、コストが莫大になり、結果として販売価格も高価になってしまいます。
このように考えると、今後もスポーツカーの共同開発は増える傾向にあるといえるでしょう。しかし、共同開発のデメリットはないのでしょうか。
自動車業界のとある関係者は次のように語ります。
「SUVやコンパクトカーなどのユーザーは、そのクルマがほかのどんなクルマとプラットフォームを共有していたとしても、あまり気にしないかもしれません。
しかし、スポーツカーのユーザーは、そのクルマがどのような部品を使っているか気にする人も少なくないでしょう。
多くのメーカーにとって、スポーツカーは自社の技術力やブランドを高めるアイコン的な存在です。
にもかかわらず、ほかのクルマと同じ部品を使っていると、あまりいいイメージはないかもしれません。
また、チューニングで味付けは変えられるとはいえ、メーカーごとのオリジナリティは少なくなってしまうのもデメリットです。
逆にいえば、今後は『自社開発であること』により価値が出てくるかもしれません。
もちろん、価格面では高価になってしまいますが、ブランドアイコンとしては重要でしょう。一方、手頃なスポーツカーは、86/BRZのような共同開発モデルか、もしくは一般車をベースにしたスポーツチューンモデルが多くなると予想されます」
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超高級ブランドは、自社の部品がどこのメーカーのものを使用しているかを積極的にアピールすることはあまりありません。「オリジナル」であることに価値があると考えていることが理由です。
手頃なスポーツカーが登場してほしいと思う一方で、各メーカーの技術の粋を集めた、オリジナルのスポーツカーの登場を願いたくなるのは、ユーザーのわがままなのでしょうか。
BMWにしてもトヨタにしても、スポーツカー作っても客筋は所詮量産乗用車メーカーの延長線で、フェラーリやポルシェなんかと車以上に客筋が大きく違う。
協力しながら独自性をだすという開発形態があってもいい。どうであれ、車種が増えるのは楽しいし。