「スポーツカー」共同開発で活路? 新型モデルが次々登場も自社開発車が減った理由とは
自動車メーカー同士の共同開発によって、さまざまなスポーツカーが増えつつありますが、今後は独自開発のスポーツカーは減っていってしまうのでしょうか。
共同開発によって復活した国産コンパクトFRスポーツカー
コロナ禍は世界の自動車メーカーに大きな打撃を与えました。なかでも新型車開発に与える影響は、今後数年にわたって影響を及ぼすでしょう。
一般的に、新車開発には数百億円規模のの投資が必要とされます。なかでも本格スポーツカーとなると、派生車種とのプラットフォームや部品の共通化が難しい場合も多く、近年では複数メーカーによる共同開発をおこなうことが増えてきたようです。
今後の国産スポーツカーはどのような形で登場するのでしょうか。
「共同開発モデル」の端的な例は、トヨタとスバルによる「86/BRZ」といえるでしょう。
2007年にトヨタ自動車の豊田章男社長の号令によって「FT-86プロジェクト」がスタート、その後スバルとの共同開発にまで発展しました。
もっともこれは、その2年前にトヨタと富士重工(現SUBARU)が完全な提携関係を結んだことでできたことでもあります。
スバルと技術提携をはじめた頃のトヨタは、すでに国際的にも圧倒的な自動車メーカーにひとつとなっていました。
しかし、唯一「高性能4WDスポーツセダン&ステーションワゴン」というカテゴリーでは、スバルの「レガシィ」や「インプレッサ」に歯が立たなかったのです。
そこにあったのは、スバルが連綿と培ってきた高性能な水平対向エンジンとシンメトリー4WDシステムという独自の技術でした。
86とBRZにおける共同開発の目的は、出来るだけ同じ仕様のパーツを使い、揃えることで、量販が見込めないスポーツカーでも利益がでるようにすることでした。
そのもっとも顕著な例がエンジンです。そもそもトヨタには、かつての「AE86」つまり「レビン/トレノ」をオマージュするコンパクトでカスタマイズしやすいFRスポーツを作りたいという目標があったのです。
しかし、そのために専用のスポーツエンジンを新たに開発することは現実的ではありませんでした。
しかし、スバルには水平対向エンジン(ボクサーエンジン)が存在しており、コンパクトで全高の低いボクサーエンジンは、スポーツカーに必要なクルマの低重心化に寄与します。
加えて回転バランスに優れることからも、FRスポーツカーに最適なユニットだったのです。
もちろん、86/BRZも、最終的にはチューニングでそれぞれの性格はわけられています。
しかし、どちらも多くの部品を共用し、同じスバルの太田工場で生産されているため、多くのコストメリットが出ました。
トヨタの圧倒的な販売力を活用し、太田工場の稼働率を高められるという点で、スバルにとってもメリットは少なくありませんでした。
久しぶりの国産コンパクトFRスポーツカーが、比較的手の届きやすい価格で登場することができたのです。これは共同開発なくしてなし得なかったことでしょう。
BMWにしてもトヨタにしても、スポーツカー作っても客筋は所詮量産乗用車メーカーの延長線で、フェラーリやポルシェなんかと車以上に客筋が大きく違う。
協力しながら独自性をだすという開発形態があってもいい。どうであれ、車種が増えるのは楽しいし。