商用車も軽が最強!? ピックアップトラック激減の裏で「軽トラック」が好調な理由
かつてビジネスカーの定番だったピックアップトラックですが、最近ではトヨタ「ハイラックス」が販売されるのみと激減しています。その一方、ビジネスユースには軽貨物車の需要が高く、なかでも軽トラックの販売が好調です。それはなぜなのでしょうか。
衝撃! ピックアップトラックより軽トラのほうが荷物を多く積める!?
2019年には、日本国内で520万台の新車が販売されました。その内、トラックやバンなどの貨物車が88万台を占めます。貨物車の内訳は、小型/普通貨物車が45万台、軽貨物車は43万台と、軽自動車が約半数に達します。
乗用車を見てみると、国内の新車市場における軽自動車の販売比率は37%です。ホンダ「N-BOX」などのヒットにより、軽乗用車も以前にも増して身近な存在になりましたが、軽商用車はさらに普及しているのです。
軽商用車が好調に売れる一方で、車種を大幅に減らしたのがボンネットを備えたピックアップトラックです。過去を振り返ると、1970年頃には、ピックアップトラックが豊富に用意されていました。
トヨタ「ハイラックス」や「ダットサントラック」、マツダ「プロシード」などに加えて、トヨタの「クラウン」や「マークII」など上級クラスの乗用車をベースにしたピックアップトラックもありました。
コンパクトな車種では、日産「サニートラック」を多く見かけましたが、それが近年では激減しています。
ピックアップトラックが減った理由はなぜなのでしょうか。そのメリットとデメリットを考えると、分かりやすいでしょう。
まずメリットは、運転感覚が乗用車に近いことです。全高は大半の車種が1550mm以下に収まり、高速道路や曲がりくねった峠道でも左右に振られにくいです。
荷台の高さも低めに抑えられているので、荷物の積み降ろしも容易です。後席を備えたダブルキャブと呼ばれるタイプなら、セダンのように使うことも可能です。低重心で走行安定性が優れているため、高速道路を使った長距離の移動にも向いています。
またピックアップトラックが全盛だった頃は、物価や所得の割にクルマの価格が高く、複数の車両を持つことが難しい時代でもありました。
そこでクラウンのダブルピックなどを購入して、毎日の配達や長距離の出張、プライベートなファミリードライブまで、さまざまな用途に使ったのです。
1967年に発売された3代目「クラウンピックアップトラック/ダブルピック」の価格は、東京地区が72万5000円でした。この金額を大卒初任給基準にいまの貨幣価値に換算すると581万円に達します。
クルマが高額商品だったので、1台のクルマで幅広い用途をカバーすることが求められたのです。
その代わりピックアップトラックには欠点もあります。前側にボンネットがあり、その下にエンジンを収めるため、全長に占める荷台の長さが短くなることです。
たとえば、前出の3代目クラウンをベースに開発されたピックアップトラックは全長4690mmで、荷台長はシングルピックが1905mm、後席を備えたダブルピックは1055mmです。
ピックアップトラックにはボンネットがあることで荷台を長く確保できないのですが、それがいまのキャブオーバータイプ(エンジンの上に座席が装着されたトラック)なら、ボンネットがないために荷台長を大幅に拡大できます。
現行トヨタ「ダイナカーゴロングデッキ」の場合、全長はクラウンのピックアップトラックと同じ4690mmですが、荷台長はもっとも長いタイプなら3120mmに達します。
ダイナカーゴの荷台長はクラウンピックアップトラックのシングルピックよりも1215mm長く、比率に換算すれば1.6倍なので積載効率は大幅に優れています。
ちなみに、軽トラックでは、ダイハツ「ハイゼットトラック」(標準ボディ)とスズキ「キャリイ」の場合、全長が3395mmに対して荷台長は1940mmです。3代目クラウンのシングルピックが1905mmなので、荷台長では現代の軽トラックが上まわります。
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