ポケモンとコラボしたダニエル・アーシャムがポルシェ「911ターボ」を手掛けた!
2020年8月に、渋谷パルコミュージアムトーキョーで開催された「レリックス オブ カントー スルー タイム」。これは、「これから1000年後、西暦3020年にポケモンを発掘ししたら──?」がコンセプトの、アメリカ人アーティスト、ダニエル・アーシャムとポケモンがコラボした展覧会であった。そのダニエル・アーシャムはポケモンだけでなく、ポルシェも手掛けていた!
ダニエル・アーシャムがポルシェとコラボしたら……
2020年の夏に「ポケモン」とコラボした展覧会を都内で開催して話題となった、アメリカの現代アーティスト、ダニエル・アーシャム。彼は子どもの頃、スニーカーやカメラ、それに様々なポルシェ、特に伝説の「911ターボ」の絵を描いて時を過ごしていた。
その情熱はずっと彼とともにあり続け、最新の作品にインスピレーションを与えることとなった。それが1986年型ポルシェ911ターボをフルレストアして再解釈した「930A」である。
ダニエル・アーシャムにとっての夢は、2年以上も取り組んだ思い入れの強いプロジェクトがやっと完了した時に実現した。彼の愛車の911ターボは今日では運転可能なアート作品であり、彼のタイムトラベルというコンセプトと、ポルシェのレースにおける豊かな遺産とが融合したものとなっている。
「930Aプロジェクトはこの2年間、僕の強迫観念になっていた。正しい走行距離と本来のコンディションを保ったオリジナル車両を見つけ出すことから、あらゆるディテールを検証することまで、930Aを作る過程で出来ることは全てやったんだ」。貪欲なポルシェファンとして、彼はそう語った。
アーシャムのジャンルを横断したアートには、アート、建築、パフォーマンスを組み合わせたプロジェクトが含まれ、彼の作品は衰退と解体を描いたディストピア的なスタイルを特徴としている。これに先立つ2019年のポルシェとのコラボレーションでは、アーシャムは992型世代の911をポスト・アポカリプス的な(終末的な)スタイルで制作し、そのマシンは現在アジアでツアーをおこなっている。
●個人的な体験がポルシェの伝統と出会った
930Aプロジェクトは、ポルシェの伝統つまりモータースポーツの豊かな遺産を、アーシャム自身の世界観とどう組み合わせれば新しい何かを生み出せるのか? というシンプルな問いから始まった。
「僕は未来的なポルシェ・レーシングチームを想像した。ディック・バーバーがル・マンで操縦した1980年のポルシェ『935 K3』や、その他の過去の象徴的なポルシェのレーシングカーを見て、これらのデザインを僕自身の歴史と融合させたんだ」とアーシャムは語る。
このデザイン言語は改造された930のインテリアにもエクステリアにも採用され、愛情こめてデザインされた無数の要素は、過去のポルシェのレーシングカーを彷彿とさせる。
「カレラRSR」のマグネシウム製リムをオマージュしたカスタムホイールや「917」風のシフトノブから、手塗りのカラーリングやオーダーメイドの内装に至るまで、それぞれの部分は、ポルシェのレース史あるいはアーシャム自身の歴史のなかの、ある瞬間とのつながりを辿ることができる。
彼がとくに誇りとしているのは930Aのエクステリアデザインだ。スポーツカーはロゴやブランド名で飾られるのが一般的だが、アーシャムと彼のチームはデス・スプレー・カスタム(DSC)として知られるデビッド・グウィザー(David Gwyther)とコラボレーションして930Aのカラーリングをデザインし、手描きの伝統への讃辞としてロゴを手描きしている。
ロゴはそれぞれ、アーシャムの過去、かつての共同制作者、ギャラリー展示、そして架空の未来のレースなどにちなんだものだ。「ある意味で、僕は自分の過去とレースのカラーリングの遺産を融合させているんだ」とアーシャム。
車内では、クラシック911のインテリアの風合いを尊重しつつ、新素材でアップデートするために特別な努力が払われた。ストーンウォッシュした重厚なキャンバス地はネイビーとグレーの色調のレザーと組み合わせて、シート、ダッシュ、ドアの内装に使われている。
メーター類もDSCがインテリアの配色に合わせて組みなおし、1980年代に日本へ輸入された911ターボの速度計の同心円状のリングのディテールが、回転計にオマージュされている。
コンセプトから完成まで2年かかったアートワークには、数えきれないほどの時間と労力がアートワークに費やされ、クルマの内外のディテールに注意が払われていることがうかがえる。このコラボレーションは、ポルシェが単なるブランドではなく、スポーツカーへの果てしない情熱とレース文化によって結ばれたクリエイティブなエンジニア、デザイナー、エンスージアストの集団なのだという証なのだ。
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