「エレノア」じゃない本物の「マスタング」のスペシャルモデル3選

フォード純正のマッスル「マスタング」とは

 続いて1969年式のフォード「マスタングBOSS 302」を紹介しよう。前年までのマスタングと比較して、ボディはさらに大型化され、実用性を高めたのは1969年式の大きな特長のひとつだが、それによってエンジンルームのサイズもまた拡大されたことも忘れてはならない事実である。

 なぜならそれによって、より大型の高性能エンジンを搭載することが可能になったからだ。

●1969 フォード「マスタング BOSS 302」

「BOSS 302」といえば、こちらのフロントマスクの方がしっくり来る人もいいだろう(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
「BOSS 302」といえば、こちらのフロントマスクの方がしっくり来る人もいいだろう(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 フォードがマスタングのセールスのために、モータースポーツをシェルビーに依頼したことはすでに触れたとおりだが、この新型ともいえる1969年式のマスタングにはフォード自身が高性能エンジンを搭載することができた。いわゆるBOSS 302とBOSS 429の2タイプのエンジンである。

 価格は結果的にシェルビーGT350よりリーズナブルなものになったので、セールス面では特にBOSS 302は人気を集めることになった。ちなみにこのBOSS 302の5リッターエンジンは、当時のトランザムレースに参戦していたマシン直系のパワーユニットである。

 RMサザビーズの調べによれば、1969年に生産されたBOSS 302はわずかに1628台。出品車はわずかに1万2500マイル(約2万km)を走行したのみのモデルで、290psのエンジンには、オプションの4速クロスミッションが組み合わされている。

 注目の落札価格は7万7000ドル(邦貨換算約810万円)。そのコンディションを考えれば、価値ある買い物といえるかもしれない。

●1970 フォード「マスタング BOSS 302」

マイナーチェンジモデルの「BOSS 302」。人気はマイチェン前の方が高いようだ(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
マイナーチェンジモデルの「BOSS 302」。人気はマイチェン前の方が高いようだ(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 そして最後に紹介するのは、翌1970年のマスタングBOSS 302だ。モデルとしての内容は、すでに解説した1969年式のBOSS 302と同様である。ただし、4灯ヘッドライトから2灯ヘッドライトにするなどマイナーチェンジが施されている。

 落札価格を決定するのはコンディションによるところが大きいが、こちらもまずまずの状態。マイナーチェンジ前のフェイスのほうが人気が高いのか、こちらは意外に入札が伸びずに、6万500ドル(邦貨換算約635万円)での落札となってしまった。

 ただし、そろそろ貴重な存在になってきたBOSS 302を入手するには良い機会だったといえるだろう。

 もしかするとアメリカン・マッスルのブームは、またこの日本にも訪れるのかもしれない。

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