「エレノア」じゃない本物の「マスタング」のスペシャルモデル3選

フォード「マスタング」は、映画やミュージックビデオなどでもよく登場する人気のアメリカを代表するクルマだ。そのマスタングをスペシャルに仕上げたモデルの市場価値をレポートする。

シェルビーが手掛けた究極の「マスタング」

 日本のカーマニアの間でも、いつの時代もアメリカ車の人気は衰えることはない。かつては「外車」といえば、大きく強力な、まさにアメリカそのものを象徴するかのような憧れの存在であった。

 現在もとくに高性能なV型8気筒エンジンを、アメリカ車としては比較的コンパクトなボディに搭載するスペシャリティカー、あるいはマッスルカーと呼ばれるジャンルのモデルには、マニアからの熱い視線が集まっている。

 そこで今回VAGUEでは、最近開催されたオークション・シーンから、興味深いスペシャリティカーを紹介しよう。

●1968 シェルビー「GT500ファストバック」

シェルビーが手掛けたマスタングは、その外観からオーラが放たれている(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
シェルビーが手掛けたマスタングは、その外観からオーラが放たれている(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 まずはアメリカ車のファンには究極のブランドともいえるシェルビー・アメリカンが、1960年代に築いた栄光の歴史のほぼ最後に生産した1968年式の「GT500」だ。

 1967年に「427コブラ」の生産を終了し、「GT350/GT500」のみに生産を集中していたシェルビーだが、その人気は高く、シェルビーでは連日、両車の生産に追われる日々が続いた。

 シェルビーにモータースポーツ活動を委託していたフォードにとって、もはやその目的は完全に達成され、ここにモータースポーツとシェルビーの関係は、完全に途切れることになったのである。

 とはいえGT500は、高性能なスペシャリティカーとして非常に魅力的な存在だった。搭載される428立法インチ=7リッターエンジンの最高出力はほぼ400psで、ミッションは4速MT。インテリアでは黒いビニールの高級バケットシートなど、さまざまなオプションが認められる。

 長いエンジンフードラインやエアインテーク、ルーバー冷却ベントなどからなる新しいフロントマスクや、追加されたリアスポイラーなどによって、エクステリアも実に美しいフォルムが完成した。

 ソリッドゴールドのペイントもコンディションは良好で、過去の所有者リストとメンテナンスレポートも一部期間を除いて揃っている。

 その人気を背景に、入札が繰り返された結果、最終的な落札価格は11万5500ドル(邦貨換算約1200万円)。この落札価格は、人気は衰えていないことの証明にほかならない。

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