国内向け新型車開発なぜ減少? 海外のお下がりばかり販売される理由とは
日本の自動車メーカーの新車開発は、かつては日本市場向けの仕様を優先して開発し、それをベースに海外向け仕様を開発するという流れでした。しかし、近年は日本向けに開発されたモデルは少なく、海外市場向けに作ったものを日本仕様に修正して売ることが珍しくありません。いったいなぜなのでしょうか。
日本メーカーでも日本市場メインで開発できない事情とは
かつて、1990年代前半頃までは日本メーカーの作るクルマはまず日本向けを作り、その一部を変更して海外展開するのが一般的でした。海外で売っている車種も、日本で売るクルマをベースに作るのが当然だったのです。
しかし、いま日本で販売されている車両を見ると、日本市場をメインとして開発されたモデルは少なく、海外市場向けに作ったものを日本仕様として仕立てて売ることが珍しくありません。いったいなぜなのでしょうか。
たとえばホンダは現行「シビック」や「CR-V」そして「アコード」など、海外デビューからかなり遅れて日本で発売されたモデルが多くありますが、それらはまず海外向けに開発されたモデルと考えていいでしょう。
日産でも「シルフィ」や「ティアナ」など、海外ではフルモデルチェンジした新型が発売されているにもかかわらず、日本は従来モデルが継続販売されていた例もありました。海外市場を優先しているからです。
いっぽうで、軽自動車や一部のコンパクトカー、そしてミニバンなど、いまなお日本市場だけをターゲットとして開発されているクルマもあります。その違いはどこにあるのでしょうか。
その理由を考えるときにヒントとなるキーワードは「日本市場の縮小&偏り」そして「効率化」といっていいでしょう。
かつて、最盛期だった1990年には日本の乗用車販売台数(登録車+軽自動車)は、年間約777万台を販売しました。その後日本の自動車市場は縮小し、520万台程と3割程度に減少。
いっぽうで海外での販売は増え続け、日本メーカーの海外依存度は高まっています。いい換えれば、日本よりも海外を重視せざるを得ない状況になってきたのです。
そこで悩ましいのが日本と海外での求められるニーズの違い。単に車体の大小のみならず、5ナンバーサイズにこだわりを持つ人が多い日本に対し、海外では小型車でも広めの車幅が好まれるなど、要求に違いが出てくるのです。
そうなると、効率よくクルマを作って売るには「日本市場最重視」とはいっていられません。
自動車メーカーは、日本で売るモデルのなかでも海外で多く販売が見込めるモデルは海外の要求に応じた設計を実施。
トヨタ「カムリ」やホンダ「アコード」、そしてスバル「レガシィ」など車体サイズが大きなセダンはその典型といっていいでしょう。
コンパクトカーでも、マツダ「CX-3」、トヨタ「ヤリスクロス」や日産「キックス」など、昨今流行りのクロスオーバーSUVなどは全幅が広めでその傾向にあります。
いっぽうで、軽自動車、ハイトワゴンなど実用性重視のコンパクトカー(トヨタ「ルーミー」やスズキ「ソリオ」など)、そしてミニバンは日本市場最重視の設計。
その理由は明確で、日本のみ、もしくは日本主体の販売展開となっているからです。
海外販売を考えていない(海外販売していても重視していない)から、日本のユーザーのニーズに合わせたクルマ作りが可能なのです。
日本発信のモデルとそうでないモデルとの大きな違いは、日本で大きな需要があるか否か、日本販売の比率が大きいかそうでないか、といっていいでしょう。
軽自動車、実用性重視のコンパクトカー、そしてミニバンは日本で売れるモデルかつ海外で需要がない(少ない)から日本だけを見た設計なのです。
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