知性とコミュ力の勝利? 超過酷な24時間レースで初出場チームが優勝した要因とは

2020年9月5日から6日に開催された、ピレリスーパー耐久シリーズ2020(S耐)第1戦で、初出場チーム「HIRIX GOOD DAY RACING」が優勝しました。初出場にも関わらず、優勝できた要因とはいったい何でしょうか。

富士スピードウェイ、コロナ禍初の「有観客」レース開催

 2020年9月5日から6日に開催された、ピレリスーパー耐久シリーズ2020 第1戦「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」は、同年春以降、無観客レースが続いていた富士スピードウェイにおいて、久しぶりの有観客レースとなりました。

 総合優勝したのはチームとして初出場の「HIRIX GOOD DAY RACING」。数々のハンデを乗り越えて初の総合優勝を成しえた理由はどんなことだったのでしょうか。

ピレリスーパー耐久シリーズ2020 第1戦で優勝した「#888 HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3」
ピレリスーパー耐久シリーズ2020 第1戦で優勝した「#888 HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3」

 2018年に50年ぶりに復活した富士スピードウェイの24時間耐久レースは、コロナ禍によって世界中のモータスポーツが中止や延期を発表するなか、当初の予定から延期されたものの、販売チケットの枚数を制限し、入場時に全員の検温をおこなうなど、感染拡大防止策を十分に講じたうえで、久しぶりに観客を入れての開催となりました。

 24時間レースということで、例年通りテントを張って家族でキャンプしながらレース観戦を楽しむ観客の姿も多くみられました。

 神奈川県から参加したSさん一家は、「24時間レースが復活した2018年から3回目です。毎回、家族で訪れてキャンプしながら観戦しています。今年は、スーパーGTが1戦、2戦とも無観客と発表されてS耐24時間もそうなるのか? と心配していましたが、無事、これまでとほぼ同じ形で開催されてよかったです」と話します。

 一部に中止となったイベントもありましたが、例年通り、花火や映画の上映(バンブルビー)は実施され、各種の物販ブースや陸上自衛隊の車両展示などのお楽しみもありました。

 しかし、開幕戦がいきなり24時間の長丁場となったり、ゲリラ的な豪雨で合計4時間以上もの長い間レースが中断したり、といった状況。ただでさえ過酷な24時間レースはさらに過酷なものになりました。

 このような状況のなか、急なドライバー変更や出火トラブルなど数々の難関を乗り越え、24時間の耐久レースを制したのは、ST-Xクラスにエントリーした初出場の国際的なチーム「#888 HIRIX GOOD DAY RACING AMG GT3」でした。

 参戦体制を公式発表した2020年2月の時点では、外国人主体の4名構成(台湾・香港・ドイツ・日本)でしたが、コロナ禍によって海外からのドライバー2名が入国できなくなり、急遽、日本人3名+外国人1名の構成に変更。

 当初から参戦予定のショウン・トン選手は欧州でも活躍する若きレーサーで、超名門の英国リバプール大学出身の23歳。

 3月からスーパーGTのテストで日本に入っており、そのまま、香港に戻ることなく、7月以降のスーパーGTやスーパー耐久に参戦し、今シーズンは日本での活動を予定しています。

 事前の予想では、優勝候補として名前が挙がっていたわけではなかった888号車。チームとして初めてのクルマで、初めてのS耐24時間レースへの参戦。勝因はどこにあったのでしょうか。

 チームマネージャー兼ドライバーの山脇大輔氏に、さまざまなトラブルやハンデを乗り越えて優勝できた理由を分析してもらいました。

――優勝を予想されていましたか。

 優勝までは考えていませんでしたが、そこそこのところまではいくだろうと考えていました。2位か3位には行けるんじゃないかなと。

――車両の選定についてはいかがでしょうか。

 林チームオーナーと相談しながら、チームマネージャーという立場で以下の点を意識しながら車両選定とチーム作りをおこないました。

「Mercedes-AMG GT3」は、「BoP(性能調整)で影響を受けにくいクルマ」「Reliability(信頼性)がある」「スペアパーツのサプライチェーンが整っている」「チーム間を公平に扱ってくれるマニュファクチャラーである」「ピレリタイヤで実績があるクルマである」というポイントをすべてクリアしていました。

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