なぜ高級SUV「レンジローバー」は誕生した? 英国紳士に愛される理由
「レンジローバー」はどうして「砂漠のロールス・ロイス」と呼ばれるようになったのか?
「あらゆる作業に適応する農民の従僕」という、朴訥きわまるコンセプトのもとに開発され、農民およびカントリージェントルメンたちからこよなく愛されてきた元祖ランドローバーとは違って、高速道路や都市にも快適に乗り入れられるレンジローバーは、スノッブな都会の富裕層にも新鮮な衝撃を与えて、たちまち市民権を得てゆくことになる。
●砂漠のロールス・ロイス
加えて、1970年代当時に世界を震撼させたオイルショックによって、急速に経済力を得た中東諸国のオイルダラーにとって、たとえ自国の砂漠であっても快適に高速移動できるレンジローバーは、ほかのどんなクルマにも代えがたい貴重な存在となる。同じ「R-R」のイニシャルを持つことから、ついには「砂漠のロールス・ロイス」と呼ばれることになった。
ところで「砂漠のロールス・ロイス」なる称号は、上質なレザーとウッドキャッピングに囲まれたゴージャスなインテリアから名づけられたものと誤解されがちだが、現実はそうではない。
レンジローバーの正規オプションリストに本革シートが載せられるようになったのは、発売から実に17年が経過した1987年。ウッドパネルに至っては、1989年から装着されたに過ぎないのだ。
ならば、レンジローバーを「砂漠のロールス・ロイス」たらしめた真の理由はといえば、オフローダーとして超一級の性能を保ちながら、オンロードにおいても素晴らしい快適性と、目を見張る走行性能を有していたことにある。
そのドライブフィールは、常にスムーズにして快適。さらには、地球上のあらゆる道を走破できるほどの耐侯性も備えたレンジローバーは、スペン・キング自身が若きころよりもっとも敬愛していたクルマ、シトロエンDSが受けたのと同じ「マジカル・カーペット(魔法の絨毯)」という賞賛を、本質はあくまで本格的なクロスカントリーカーでありながら獲得することができた。
そして、持ち前の資質がもっとも試される環境、例えば伝説のラリーレイド「パリ-ダカール・ラリー」などでは、創世期におけるトップコンテンダーとして目覚しい活躍を見せたのだ。
こんなレンジローバーの素晴らしさに心奪われたのは、何も「下々の」富裕層たちだけではない。
伝統的に狩猟やポロを嗜むイギリス王室メンバーも歴代レンジローバーを愛用し、初期のランドローバー時代から合わせると、エリザベス女王とエディンバラ公、故エリザベス王太后、そしてチャールズ皇太子の4名から、英国王室御用達の証である「ロイヤルワラント」を得るに至った。
これは自動車としては、史上初となる栄誉だったのである。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。