平成の怪物くんアルファ ロメオ「SZ」と「RZ」の令和での人気を探る

走行距離は落札価格にどれくらい影響するのか?

「THE EUROPEAN SUMMER AUCTION」が無事コンプリートとなった翌日、7月23日にスタートし、同月31日に締め切りを迎えた「NORTH AMERICA」オークションでは、もう一台のES30、アルファ ロメオRZが出品された。

●1993 アルファ ロメオ「RZ」

走行距離1万5258km、多少使用感が出ているアルファ ロメオ「RZ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
走行距離1万5258km、多少使用感が出ているアルファ ロメオ「RZ」(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 アルファ ロメオRZは、SZのファストバック・ルーフを小さなソフトトップに置き換えるとともに、ウィンドシールドも潔くローカットした、ストイックなロードスターだ。

 アルファ ロメオ主導で開発されたSZに対し、RZの生産化についてはカロッツェリア・ザガート側の意向が強く働いたとされており、1991年に「SZの生産終了後に350台を限定生産」という生産計画とともに、東京モーターショーにて発表された。

 ところが、実際の生産台数は1993年7月までに278台(ほかにも諸説あり)で終わったともいわれている。

 デビューの段階から日本とは浅からぬ縁のあったRZだが、今回の出品車両は日本で長らく過ごした個体であることがWEBカタログに記されている。その記録によると、1993年4月30日に完成したこのRZは新車として日本に輸出されたのち、1995年9月に日本人のファーストオーナーにデリバリーされたとのことである。

 肝心のプライスだが、こちらは北米主導のオークションなので、通貨はドル建て。エスティメートの段階から、「THE EUROPEAN SUMMER AUCTION」のSZよりは遥かに安価な6万−8万ドルに設定されていたものの、これは現代のマーケットにおけるSZとRZの適正な評価に即した価格差ともいえよう。

 もともとの生産台数はSZよりも遥かに少なく、しかも国際マーケットではクローズドよりも評価が高い場合の多いオープンモデルながら、少なくとも現状におけるRZの人気と相場価格は、SZよりも若干劣るようなのだ。

 7月31日のオークション最終日では、5万6000ドルまで上昇したところで入札は終了。オークションハウス側に支払われる手数料を合わせれば、なんとかエスティメートに届く、6万1600ドル(邦貨換算約654万円)という落札価格となった。

* * *

 もう一台のSZは流札に終わってしまったので、直接比較するのは難しいかもしれないのだが、今回のRZにつけられたプライスは、ここ数年の相場を勘案してもかなりリーズナブルといえるかもしれない。

 ただし、この価格差にはRZとSZの人気差以外にも、重要なファクターがあったようだ。それはクラシックカーのみならず、すべてのユーズドカーにおいて価格を左右する「コンディションの差」である。

 この個体は、前述のとおり日本国内の個人オーナーのもとで2014年まで過ごし、その後は日本のディーラーを介して2018年にアメリカに移動。現在に至るまでに1万5258kmの走行距離を計上しているという。

 公式WEBオークションカタログの写真でも正直に示されているが、本革シートやコンソール周辺、あるいはステアリングホイールにも、走行距離からすれば至極当然な使用感もあり、プライスを抑える理由となっているのは間違いあるまい。でも、それは順当に乗られてきた歴史の証明……、といえなくもないだろう。

 一般的な人気ではSZに敵わないものの、個人的にはRZも「憎からず想う」筆者としては、今回のオークションにおける落札価格が、なかなかお買い得にも感じられてしまったのである。

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