コロナ禍だからクルマ旅!! ベントレー「コンチネンタル GT V8」の至福旅とは
V8になった「コンチネンタルGT」の走りはいかに!?
エクステリアカラー「アイス(白)」のボディに「ブラック ライン スペック」を選択したことで、引き締まった印象になったコンチネンタルGT V8は、スーパースポーツGTである出自をアピールしているかのようだ。
さっそくドライバーズシートに座ってみる。
メインハイドとセカンダリーハイドのどちらも「ベルーガ(黒)」のインテリアは、エクステリアの「アイス」とのコントラストも鮮やかだ。さらに淡いアイスブルーの糸でステッチされたダイヤモンド柄が見た目にもクール。男性から女性のパートナーへコンチネンタルGTをプレゼントするなら、なんとも心憎い演出といえるだろう。なぜならアイスブルー・ダイヤモンドの宝石は、ブライダルリングとしてよく知られているところだからだ。
いきなり話は逸れてしまった……わけではない。ベントレーでは、内外装のカラーや仕様をマリナーでいくらでも自分の好みにすることができるのである。たとえば、好きな植物の花弁や、お気に入りのバッグといったもののカラーさえオーダーすることが可能だ。
1台のベントレーに自分だけのストーリーを紡ぐ。これこそオーナーだけに許される至福の愉しみにほかならない。
●V8とW12の違いは、メインディッシュの素材の違いに過ぎない
今回の試乗したコースは、横浜青葉ICから首都高速K7とK5経由で大黒JCTへ抜け、湾岸線で都内へ向かうというルート。有明JCTからレイボーブリッジを渡り、一旦、京橋で降りて銀座周辺の一般道を試乗し、再び首都高速に乗って、3号線−東名高速で横浜青葉ICまで向かうという周回コースである。
横浜青葉ICから生麦JCTまでは、緩やかなコーナーが連続するのだが、さっそくV8を搭載したコンチネンタルGTの美徳に触れることになった。
先代モデルまで前後トルク配分が40:60であったのだが、現行モデルでは通常は後輪駆動に近く、状況によって前輪へ駆動を配分するシステムとなった。走行モードが「コンフォート」では前輪に最大38%、「スポーツ」では最大17%駆動配分される。どっしりと安定したグラドツアラーという印象ではなく、軽快なスーパースポーツといった印象だ。
さらにFFをベースとする「MLB」プラットフォームから、FRをベースとする「MSB」プラットフォームを採用したことにより、コンチネンタルGTのフロントオーバーハングは短くなり、エンジンはよりフロントミッドシップに配置されるようになったことも、軽快な走りに大きく起因しているだろう。これは、先に登場していたW12でも同様であったが、V8の方がより強く感じられる。
コンチネンタルGTの車検証上の車両重量は、V8が2210kg、W12が2260kgとその差は50kgである。同じく車検証上の前前軸重はV8が1180kg、W12が1240kgとなり、V8の方が60kgも軽い(ちなみに後後軸重は、V8が1030kg、W12が1020kg)。
つまり、単純に4気筒分フロントが軽くなったことで、V8モデルのほうが軽快さを増していると判断してよいだろう。これに限りなくFRに近い駆動配分が相まって、コンチネンタルGT V8に「ハンドリングマシン」という新たな美徳が加わったのである。
首都高速K7のアップダウンしながらの緩やかなコーナーを、パドルシフトでシフトダウンしながらひとつ、またひとつとクリアしていくと、あっという間に大黒JCTである。トンネル内でサイドウインドウを開けると、重低音のエキゾーストサウンドがトンネル壁面で谺して、想像していたよりも勇ましいことに気が付かされた。窓を閉じた状態のキャビンで聴く、というより身体で感じるエキゾーストサウンドは、ドライバーに心地よい部分だけを抽出して伝えられているのだ。
スーパースポーツであっても、ベントレーはエンジンそのものの存在をドライバーとパッセンジャーにこれでもかと伝えるようなことはしない。あくまでもキャビンは快適な空間にほかならず、長距離をドライブした際にエンジンサウンドがストレスとして蓄積されることはない。そう、コンチネンタルGT V8は、コーナリングを楽しめる一方で、グランドツーリングカーとしての本分を忘れてはいないのだ。
きっと本領を発揮するのは、英国のカントリーロードをシティから郊外へと何百kmもドライブするようなときだろう。もしくはスイスからアルプスの山岳路を抜けてイタリアへと旅するときであったり、モナコからジェノバへと海岸線をドライブするときであるのかもしれない。
コンチネンタルGT V8は、そうしたグランドツーリングをラグジュアリーで濃密なエクスペリエンスへと変えてくれる。別の表現をすると、ドライブすることそのものを「冒険」であったり「旅」そのものへと昇華してくれるといっていいだろう。もちろん、W12を搭載したコンチネンタルGTも同様だ。
細かくV8とW12の走りに関する特性の違いを挙げていくことはできるだろう。たとえば、V8の方が少しだけワインディングを得意とし、W12の方が少しだけ高速でのロングランに向いているといったような。しかし、紛れもなく両車に通じているのは、グランドツーリングカーであるという点だ。
それはフレンチコース・メニューのメインディッシュを、赤い肉(牛・鹿・馬・羊)、黒い肉(猪・野兎・野鳥)、白い肉(仔牛・豚・鶏)のいずれを選ぶのかというのに似ている。V8とW12という「メインディッシュ」の「素材」が違うだけで、「グランドツーリングカー」という「コース」は同じなのだ。
だから、外観上に分かりやすい差異はなく、V8とW12には優劣、というかよくあるグレード間のヒエラルキーというのものは存在しない。どちらもがベントレーの「コンチネンタルGT」なのである。
さらに料理に喩えるならば、コンチネンタルGTのオーナーが愛車で旅に出かける愉しみは、メインディッシュの調理法やソースによって、その前後の料理でメニューにリズムをつくり、コース全体としてのハーモニーやバランスが考えられた料理を味わうのに似ているといってもいいかもしれない。
つまり、メインディシュの素材にV8を選ぶならば、V8をあまねく味わうために積極的にワインディングの多いルートをセレクトしてグランドツーリングに出かけるといいだろう。目的のワインディングまでの道程や宿泊先が、いうなればメインディッシュまでの料理。旅全体のリズムとハーモニーを考えてプランを練ることは、コンチネンタルGTのオーナーだけに許された愉悦の時間である。
もちろん、フルコースでなくても構わない。オードブルの次にメイン、そしてデザートといったシンプルなグランドツーリングでも、さらにはメインだけでもいい。
コロナ禍で「旅」のスタイルが変わったいまだからこそ、コンチネンタルGT V8で日本全国にある風光明媚な道を旅してはいかがだろう。実は、英国のカントリーロードやリビエラ海岸にも引けを取らない素晴らしい景色が待っているはずだ。
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