一見さんお断りのフェラーリ「スペチアーレ」 明暗分かれたモダン・フェラーリの価値

オプションに3000万円かけたフェラーリに値打ちはあるのか

 フェラーリ812スーパーファストは、2017年3月に開催されたジュネーヴ・ショーにてワールドプレミアに供された、F12ベルリネッタの後継モデルだ。

「800ps+12気筒」を意味する車名が示すように、フェラーリの量産ストラダーレ史上もっともパワフルという、最高出力800psの6.3リッターV型12気筒エンジンを搭載する。

 一方の「スーパーファスト(Superfast)」は、1964年にピニンファリーナ主導でごく少数を製作した伝説の超豪華モデル「500スーパーファスト」のペットネームにあやかったものである。

●2018 フェラーリ「812スーパーファスト・テーラーメイド」

およそ3000万円ほどのテーラーメイド・プログラムを施したフェラーリ「812スーパーファスト」。この年式のフェラーリだと、テーラーメイドにかかった費用はあまり落札価格には反映されないのが常だ(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
およそ3000万円ほどのテーラーメイド・プログラムを施したフェラーリ「812スーパーファスト」。この年式のフェラーリだと、テーラーメイドにかかった費用はあまり落札価格には反映されないのが常だ(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 その麗々しいネーミングが示すとおり、いわゆる「スペチアーレ」を除けば格別にゴージャスなフェラーリなのだが、さらに今回の「SHIFT MONTLEY」出品車両は特別中の特別な1台であった。

 エクステリア/インテリアに関するあらゆる特別オーダーにも応えるために、フェラーリ本社が2011年末から開設した「テーラーメイド・プログラム」によって、ビスポークで製作された1台なのだ。

 オリジナルカラーである「Giallo Nancy(ナンシーイエロー)」でペイントされたボディには、イタリア国旗の「トリコローレ」をアレンジしたストライプが、フロントバンパーから左右ボディサイドのボトムを飾っている。また、ボディの随所にカーボンファイバーのパーツがあしらわれ、引き締まった雰囲気を醸し出している。

 一方インテリアは、パンチホールやステッチをイエローとして黒革のレザーハイドとのコントラストを際立たせるほか、アルカンターラとカーボンファイバー、そしてイタリア国旗色を巧みに使用することでボディカラーのテーマを反復するなど、実に29万ドル(邦貨換算約3000万円)分のエキストラが盛り込まれていたという。

 ただし、個人の嗜好が濃厚に反映されたクルマが他人にとっても魅力的かどうかは、また別のお話しとなるのが常。しかしこの個体については、ビスポークでオーダーしたファーストオーナーのテイストが、なかなか好意的に受け取られたようだ。

 この華やかな812スーパーファストに対して、RMサザビーズ社は35万ドル-39万ドル(邦貨換算約3700万円-4100万円)のエスティメートを設定していたのに対し、8月中旬に締め切られたオークションでは、34万ドルまで上がったところで終了。オークショネアに支払われる手数料を合わせれば、エスティメートに届く37万4000ドル(約3950万円)という、けっこうなプライスとなったのだ。

 ほぼ同じ時期に、RMサザビーズ社の最大のライバルであるボナムズ社が開催した「Quale Motorcar Auction」では、テーラーメイドまではいかないものの、オプションを満載した812スーパーファストの落札価格が31万250ドル(約3270万円)に終わったことと比べると、テーラーメイドにはそれなりの評価が下されることを示しているようだ。

 しかし、「F12tdf vs 812スーパーファスト」、つまりは「スペチアーレvsテーラーメイド」の対決についていうならば、やはり「スペチアーレ」の圧勝に終わった……、といえるだろう。

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