誰もが道を譲った!? バブル時代に憧れた極悪メルセデスとは

ポルシェが手掛けた「500E/E500」をAMGがさらにチューン!!

 RMサザビーズ「SHIFT MONTLEY」オークションに出品されたもう1台のAMGは、1990年代を代表する「E60AMG」である。

 1990年代に入った時期、慢性的な経営危機にあえいでいたポルシェを救済するために、開発と初期モデルの生産をポルシェに委託したことでも知られる、メルセデス・ベンツの伝説的名作「500E/E500」をベースに、ダイムラー・ベンツ社の傘下に収まった直後のAMGが仕立てた、これまた伝説のチューンド・リムジーネ(セダン)である。

●1994 メルセデス・ベンツ E60 AMG

もともと人気の高いW124型の「E500」がベースとなる1994年式メルセデス・ベンツ E60 AMG(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's
もともと人気の高いW124型の「E500」がベースとなる1994年式メルセデス・ベンツ E60 AMG(C)2020 Courtesy of RM Sotheby's

 E60AMGでは、V型8気筒32バルブエンジンの排気量を、スタンダードの500Eの5リッターから6リッターに拡大。最高出力は326psから381psにアップ。最大トルクも、480Nmから580Nmまで増強されている。

 しかし、これだけのスーパーセダンとはいえ、クラシックカー・マーケットにおいては、4ドア車の価格相場は2ドア車に比べると低めに推移するのがセオリーである。ところが、E60AMGほどのカリスマ的モデルとなると話は別のようだ。

 これまで日本国内であっても海外であっても、比較的リーズナブルな個体でも1000万円超えは当たり前。最終期の「E60AMGリミテッド」など、特に希少なモデルでは2000万円前後で取引されてきた事例もあるようだ。

 ところで、目ざといVAGUE読者諸賢はお気づきかもしれないが、このクルマの写真をよくよく見ると、背景として東京某所の情景が写り込んでいる。実は、こちらも日本に生息していた個体。つい先ごろ、2020年4月に日本から流出したばかりの1台なのだ。

 1994年型というこのE60AMG、生産翌年におそらくは新車並行車として日本に輸入され、以来四半世紀にわたって東京都某区で使用されていたと推測される。

 また、W124系メルセデスでは有名な、東京の某スペシャルショップの発行による複数の記録簿も添付されており、日本を出る直前まで入念なメンテナンスを受けていたことも良くわかる。

 エスティメートは近年の人気を受けて、また洋の東西を問わず人気カラーである「サファイアブラック」であることも加味してだろうか、12万5000ドル−15万5000ドル(邦貨換算約1300万円−1650万円)という、なかなか強気な値付けがなされていた。

 しかし、オンライン上での入札はいまいち振わず。8万5000ドル(邦貨換算約910万円)という、オーナーからすれば不本意な価格で終了となってしまった。

 それでも今回の出品に際して、オーナーとRMサザビーズ社ではリザーヴ(最低落札価格)を設けていなかったのか、手数料込み9万3500ドル(約1000万円)で落札されることになったのだ。

●VAGUEからひとこと

 今回オークションレビューした2台のAMGは、奇しくも日本で長らく乗られていた個体だった。時代はちょうどバブル期で、AMGだけでなくケーニッヒ仕様のメルセデス・ベンツも数多く輸入されていた時代である。

 1980年代から1990年代初頭に日本に持ち込まれた欧州の名車たちは、次々と日本から流出しているのが現状である。

【画像】バブル期の日本で畏れられていた「AMG」とは?(19枚)

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