デカいのは嫌? なぜ大型ウイング装着車は激減 多様化ニーズが要因か

1980年の後半以降、高性能なスポーツモデルには大型リアウイング・スポイラーが装着されていました。しかし、近年のモデルではかつての大型ウイングやスポイラーを装着するモデルを見かける機会が減りました。なぜ大きく派手なリアウイング・スポイラーを装着するモデルは激減したのでしょうか。

大型のリアウイングやスポイラーは好まれない?

 かつての高性能スポーツカーには、大型のリアウイングやスポイラーが装着されているケースがありました。これは、「大きく派手なほど効果が高い」という理由から採用され、当時のクルマの運動性能の高さを象徴するアイテムとなっていました。
 
 しかし、近年のスポーツモデルでは、かつてほど巨大で派手なリアウイングを装着しているケースが激減しています。なぜ、性能を追い求めるスポーツモデルから大型なリアウイングを見かける機会が減ってしまったのでしょうか。

2020年秋にマイナーチェンジするホンダ「シビックタイプR」も大型リアウイングは継続採用されている
2020年秋にマイナーチェンジするホンダ「シビックタイプR」も大型リアウイングは継続採用されている

 リアウイングとは車両後端の高い位置に装着する翼端板で、2本の支柱によって支えられている形状がほとんどです。

 大きな役割としてダウンフォースといわれる車体を地面に抑える力を得ることができる装備で、F1マシンを代表するレーシングカーなどでよく見かけるのはこのリアウイングです。

 一方のリアスポイラーは、ボディに発生する空気の流れに沿うように取り付けられたパーツで、走行時の気流の乱れを整えることで、加速力アップや燃費向上といった効果が得られます。

 国産車において、1989年に登場した日産「スカイラインGT-R(R32型)」が大型の装備のリアスポイラーを装着した先駆けモデルといわれ、それ以降トヨタ「スープラ(A80型)」、ホンダ「インテグラ タイプR」やスバル「インプレッサWRX STI」、三菱「ランサーエボリューション」といったさまざまなスポーツモデルに採用されています。

 1990年代中盤からは車検制度の緩和によりカスタマイズの自由度が劇的に広がったことで、社外品パーツが増え、アフターパーツマーケットも活性化していきます。

 しかし、2000年代中盤から大きなリアスポイラーが姿を消し始め、近年は、巨大で派手なリアスポイラーやリアウイングが装着されるスポーツモデルが激減しています。

 なぜ、これほどまでに減ってしまったのでしょうか。この理由について、スポーツカー専門の販売店スタッフは次のように話します。

「最近は大型パーツを好む人が減ってきた印象はあります。

 理由はさまざまだと思いますが、なかには大型の派手なものがダサいとか、リアウイングは邪魔になるという人もいます。
 
 また、そもそもサーキットでのレース走行など相当なスピードを出すことがなければ、大型の装備をつけて性能を高める必要性も正直ありません。

 日常で乗る程度であれば、ほとんどその効果は体感できないレベルなうえ、なくてもとくに支障はないといえるでしょう」

※ ※ ※

 最近では、空力技術が向上したことで、ボディ下面でもダウンフォースを得られるようになったといわれています。

 ボディ下面がフラットなクルマにディフューザーが加わると、整流された空気が拡散(ディフューズ)され空気の流速が速まることで強い負圧が発生し真空状態に近くなりダウンフォースが発生。

 ダウンフォースがボディ下面で発生できるようになったことで、空気抵抗が増える傾向にあるリアウイングやスポイラーなどの空力付加物の必要性が薄れていったという事情もあるといいます。

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