「シーマ現象」ではなく「クラウン現象」だった!? 意外と知られていない車にまつわる話5選

「クラウン」が「N-BOX」並に売れていた!?

●スズキの軽商用車は巨匠がデザイン!?

斬新なフォルムにデザインされた「キャリイ」
斬新なフォルムにデザインされた「キャリイ」

 現在、スズキの商用車ラインナップは、軽トラックの「キャリイ」と、1BOXタイプの商用バン「エブリイ」に分かれていますが、かつてはキャリイに統合されていました。

 初代は1961年に発売された「スズライト キャリイ」で、ボンネットタイプのトラックとバンとしてデビュー。

 その後、3代目からは車名をキャリイに改められ、ボディも荷台が大きくできるキャブオーバーとなりました。

 そして、1969年に発売された4代目キャリイは、外観のデザインを巨匠ジウジアーロに依頼した異色のモデルです。

 1960年代から活躍していたジョルジェット・ジウジアーロは、イタリア人工業デザイナーで、これまでクルマのみならずカメラや時計などのデザインを手掛けています。

 クルマで代表的な作品は、フォルクスワーゲン初代「ゴルフ」やフィアット初代「パンダ」、国産車では、いすゞ「117クーペ」、トヨタ初代「アリスト」などが挙げられます。

 当時、自らデザイン会社であるイタルデザインを創設しており、4代目キャリイのデザインも同社によっておこなわれました。

 なかでもバンは、フロントウインドウとリアウインドウの傾斜角度がほぼ同じで、横から見るとどちらが前か一見するとわからない斬新なフォルムを採用。

 秀逸なデザインでしたが、バンは限られたサイズのなかで荷室容量を稼ぐことが重要で、この4代目キャリイのデザインでは荷室を大きくできないという問題がありました。

 そのため、わずか3年ほど販売された後に5代目にモデルチェンジされ、オーソドックスなスタイルに戻されてしまいました。

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●シーマよりも遥かに売れていたクラウン

爆発的な大ヒットを記録した8代目「クラウン」
爆発的な大ヒットを記録した8代目「クラウン」

 日産は1988年に高級パーソナルセダンの初代「セドリックシーマ/グロリアシーマ」(以下、シーマ)を発売しました。

 当時の日本はバブル景気の真っ只中で、トップグレードで500万円以上と高額ながら、ユーザーの高級志向の流れに乗ってヒットしました。

 シーマに追従するように各メーカーとも次々と高級セダンを発売し、好調なセールスを記録。この状況は社会現象となり、後に「シーマ現象」と呼ばれました。

 一方、トヨタも1989年に初代「セルシオ」を発売しましたが、それに先立って1987年に8代目「クラウン」が登場しています。

 4ドアハードトップには3ナンバー専用のワイドボディがラインナップされ、トップグレードの「ロイヤルサルーンG」は「ソアラ」や「セリカXX」と同じ3リッター直列6気筒DOHCエンジンを搭載する意欲作でした。

 さらに、1989年にはセルシオに先行して4リッターV型8気筒DOHCエンジンを搭載した「4000ロイヤルサルーンG」を追加。1990年には2.5リッター直列6気筒DOHCエンジン搭載車が登場するなど、あらゆるニーズに対応。

 その結果、好景気の追い風もあり、一時期は月間販売台数で「カローラ」を上まわり、高額なモデルでありながらも1988年から1990年の国内販売台数ランキングでカローラ、「マークII」に続いて3位になるほどの人気ぶりでした。

 なかでも1990年は歴代クラウンで最高となる約24万台を販売。初代シーマが初年度で約3万6000台、4年間で約13万台販売したのも驚異的ですが、8代目クラウンは遥か上を行っていました。

 2019年にプリウスが登録車でもっとも売れたモデルですが、12万5587台です。また軽自動車ではホンダ「N-BOX」が25万3500台ですから、いかに8代目クラウンが凄かったかが伺えます。

※ ※ ※

 前述のスポーツ360について、ユニークなエピソードがあります。文中にもあるとおり、ショーに出展されたスポーツ360は赤い塗装が施されていました。

 しかし当時、赤や白は消防車、救急車など緊急車両と同じということで、クルマのボディカラーとしては法律で禁止されていたというのです。

 ショーカーが赤く塗装された理由は、小さなクルマをできるだけ目立たせるためであり、本田宗一郎氏も大いに気に入っていたといいます。

 そこで、本田技術研究所の開発管理を担当していた人が、幾度となく運輸省へ通ったことで、やっと販売の許可が得られ、S500は赤をイメージカラーとして発売できました。

 他メーカーもすぐに赤いボディカラーのモデルを発売しましたが、ホンダの尽力がなければ、いまも赤や白のボディカラーは無かったかもしれません。

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Writer: くるまのニュース編集部

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