なぜ日本では不人気でヨーロッパでは定番化? 「ステーションワゴン」を考えてみた
同じ「ワゴン」タイプでもドイツ・プレミアムスリーで呼び名が違う
面白いことに、ステーションワゴンの呼び方にも違いがある。
メルセデス・ベンツは王道的に「ステーションワゴン」と呼ぶが、BMWは「ツーリング」、アウディは「アバント」と呼ぶ。

これはBMWの場合、ステーションワゴンの源流が1960年代後半から販売した「2002シリーズ(通称マルニ)」の2ドアハッチバックモデルの「ツーリング」にあり、そのスポーティな伝統を大切にする姿勢の表れだ。
アウディは単なる荷物運搬車ではなく、フランス語で「前進」を意味するAVANTを使うことで、ステーションワゴンにアウディ独自のデザイン哲学と最先端技術を込めていることを表現しているのだ。

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一方、日本やアメリカでは、欧州ほどの高い速度での走行性能が求められないことが大きい。
そうとなれば、室内空間が広くて便利なSUVやミニバンのほうが売れるのは道理だ。また、クルマを走らせる基本的な技術が高まったことで、SUVやミニバンでもかつてよりも高い高速走行性能が実現できるようになったのも理由のひとつだろう。
きちんと高速を走れるのであれば、室内は広いSUVやミニバンのほうが良いと考える人が多いのだから、ステーションワゴンを選ぶ理由がない。
さらにいえば、直近10年ほどは、世界中でSUVがブームになっていた。走行性能が上がり、高速道路の移動も以前ほど苦にならなくなったのもあるだろう。
また、新しいクルマのボディタイプとして、注目度が高まったという側面もある。モータリゼーションが到来して、人々が初めてのクルマを購入してきた中国は、まさしくそういう風潮だ。
「最初の1台目は、王道的なセダンを買う。次も同じではつまらないから、目新しいSUVがほしい」というわけだ。
実利的な理由もなく、さらにSUVという新しいトレンドも到来した。その結果、現在の日本やアメリカからステーションワゴンが消えていった理由といえるだろう。
Writer: 鈴木ケンイチ
1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。



















