「カウンタック」の原型になった!! アルファ ロメオ「ティーポ33」コンセプト三兄弟とは?

まるでフェラーリのようなアルファ ロメオのコンセプトカーの理由は?

 ベルトーネと同様、アルファ ロメオの申し出を受けた名門ピニンファリーナは、1968年から1971年にかけて、3台のコンセプトカーを製作した。なかでも1969年に発表された第2のスタディは、とても興味深いエピソードを持つ。

●ピニンファリーナ・プロトティーポ・スペチアーレ:1969年

1969年にピニンファリーナが手掛けた「プロトティーポ・スペチアーレ」は、フェラーリ「250P5」が元ネタとなっている
1969年にピニンファリーナが手掛けた「プロトティーポ・スペチアーレ」は、フェラーリ「250P5」が元ネタとなっている

 実はこのクルマのベルリネッタ・ボディは、元々は1968年のジュネーヴ・ショーにて発表されたピニンファリーナのコンセプトカーであった。フェラーリの伝説的レーシングスポーツ「330P4」のシャシに、当時のF1エンジンを搭載したフェラーリ「250P5」に架装されたものだった。

 ジュネーヴ・ショー終了ののち、250P5から降ろしたボディを今度はアルファ ロメオ33ストラダーレ用のシャシに架装し直し、新たに「33/2プロトティーポ・スペチアーレ」として、1969年に再び発表されたのである。

 この少々強引ともとれるコンバートは、当時アルファ ロメオ社トップの地位にあった、ジュゼッペ・ルラーギ会長のアイデアだったともいわれている。

 とはいえ、33/2ストラダーレのホイールベースは、フェラーリ330P4の2400mmに比べて2350mmと5cm短かったため、ボディ本体に若干手が加えられたほか、フロントエンドに新設されたラジエーターグリルの中央には、アルファ ロメオの「盾」が据えられた。

 またフェラーリ250P5のノーズ中央に配置された、極めて特異かつ未来的なブロック型の横長ヘッドライトは、左右フェンダーに埋め込まれたコンベンショナルな丸型リトラクタブルとされていた。

 このフェラーリ250P5とアルファ ロメオ33/2プロトティーポ・スペチアーレのテーマは、ピニンファリーナが1965年の「ディーノ206Sスペチアーレ」のために研究したデザインを発展させたものといわれている。

 しかし、ディーノと比べると、そのラインはより成熟するとともにクリーンなものとされていた。特にディーノ・スペチアーレは、ピニンファリーナの作風としては稀なことだが、リアウイングなど多くの空力的付加物が取りつけられていたので、その差はより明白に感じられたことだろう。

 同じくディーノ・スペチアーレからの進化をはっきりと感じさせるのは、前端がラジエーターグリルよりもさらに前に出て、左右凸状を成す複雑な丸みを持つフロントフェンダーだ。

 他方、リアフェンダーも豊満で複雑なスタイルだが、フロント同様にタイア前後の窪みなどで手際よく仕立てられ、視覚的な重みを巧みに消し去っていた。

 その一方で、リアエンドはフェラーリP5のようなスリット型ではなく、コンベンショナルなテールランプと、小さいながらバンパーも取り付けられていた。これは、市販ストラダーレとしての資質を追求すべし、というルラーギ社長のリクエストだったかもしれないのだが、ピニンファリーナの33/2プロトティーポ・スペチアーレも、生産化の夢は果たせなかった。

●イタルデザイン・イグアナ:1969年

1969年にイタルデザインが手掛けた「イグアナ」は、マセラティ「ボーラ」やロータス「エスプリ」へとデザインが反映された
1969年にイタルデザインが手掛けた「イグアナ」は、マセラティ「ボーラ」やロータス「エスプリ」へとデザインが反映された

 アルファ ロメオ・ティーポ33/2ストラダーレをベースにコンセプトカーを提示した第3のカロッツェリアは、まだジョルジェット・ジウジアーロが創業して間もない「イタルデザイン」社であった。

 そのワールドプレミアは1969年のトリノ・ショーである。彼らが最高機密のもと、のちの「アルファスッド」のデザインワークに取り組もうとしている時期のことだった。

 ショーデビューに際して「イグアナ」と呼ばれることになった、ジウジアーロの33/2プロトティーポは、ウェッジシェイプのボディラインとルーフの構造が最大の特徴となっている。

 このルーフはヘアライン加工の施されたスティールにガラス窓が組み合わされ、剛性とコックピットから外部への視界を両立するアイデアに基づくものだったという。

 ワイパーはコンシールド化され、ノーズからウィンドシールドのスムーズなラインが遮断されるのを防いでいる。フロント・フードは左右フェンダーの峰より一段低く落とされるが、ウィンドシールド直前で再び高くなり、ワイパーもそこに収められた。

 この手法はルーフとリアエンド、そしてリアのエンジンフードとフェンダーでも反復され、それぞれデザイン上の整合性を高めている。ボディサイドから回り込み、ルーフとリアエンドの間にできた段差には、エアインテークが巧みに組み込まれたほか、リアウインドウの後端には、気流を安定させる機能を持つ補助スポイラーも用意された。

 テールの造形も極めて明確に特徴づけられたもので、4つの幅広スリットを階段状に並べたエアアウトレットは、まさしくこのクルマの命名の由来となった珍獣イグアナの尻尾の「ウロコ」を思わせるものだった。

 そして、当時のショーカー然としたベルベット張りのインテリアについても、助手席は「締める」シートベルトではなく、シートを「着る」タイプのセーフティジャケットで上半身を固定するという、かなり奇抜なアイデアも投入されていた。

 イグアナもまた生産化には至らなかったが、イタルデザインがこののちアルファ ロメオとのコラボ事業として製作する様々なモデルのモチーフとなったことは、歴史が証明している。

 またイグアナ自身も、1976年12月に旧ムゼオかオープンして以来、長らく同館のスターとして来場者の目を楽しませてくれている。

【画像】ベースは同じでも三者三様のコンセプトカートは?(14枚)

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