「カウンタック」の原型になった!! アルファ ロメオ「ティーポ33」コンセプト三兄弟とは?

 アルファ ロメオが110歳の誕生日を迎えた2020年6月24日、イタリア国内のアルフィスタ(アルファ ロメオ愛好家)たちを対象とする祝賀ミーティングの舞台となった「ムゼオ・ストーリコ・アルファ ロメオ(アルファ ロメオ歴史博物館)」には、かつてアルファ ロメオと名門カロッツェリアたちによってコラボ製作された素晴らしいプロトティーポたちが、百花繚乱のごとく収蔵・展示されている。今回はそのなかでも、アルファ ロメオ史上屈指の名作「ティーポ33/2ストラダーレ」のシャシに架装された、アグレッシブ極まりない3台のコンセプトカーを紹介しよう。

カウンタックの原型は、カラボだった!

 いまや誰もが名車として認めるアルファ ロメオ「ティーポ33/2ストラダーレ」だが、その生産は当時のFIAグループ5スポーツカーのレギュレーションが求める最低生産台数25台どころか、20台にも満たない(訳注:諸説あるが18台説が濃厚とされる)、ごく少数に終わってしまった。

アルファ ロメオ「ティーポ33/2ストラダーレ」をベースにした美しいコンセプトモデル3台は、アレーゼのアルファ ロメオ歴史博物館の同じフロアに展示されている
アルファ ロメオ「ティーポ33/2ストラダーレ」をベースにした美しいコンセプトモデル3台は、アレーゼのアルファ ロメオ歴史博物館の同じフロアに展示されている

 しかしながら、企画当初は500台の限定生産を目論んでいたともいわれるアルファ ロメオは、今度は各カロッツェリアにパートナーシップを求め、その生産を委託するかたちで再起を図ろうと模索を開始する。

 そのオファーに興味を示したのが、ヌッチオ・ベルトーネ。彼が率いるカロッツェリア・ベルトーネは、時期を隔てて2種類のデザインスタディを発表することになった。

●ベルトーネ・カラボ:1968年

1968年にベルトーネが手掛けた「カラボ」は、「カウンタック」のデザインに反映された
1968年にベルトーネが手掛けた「カラボ」は、「カウンタック」のデザインに反映された

 先陣を切って紹介するのは、1968年のパリ・サロンにて発表された最初の1台だ。「カラボ」と名付けられ、ウェッジシェイプ(クサビ形)を自動車デザインに活用したパイオニアのひとつとなったコンセプトカーである。

 ベルトーネと同社のチーフスタイリストだったマルチェッロ・ガンディーニは、このカラボのデザインにあたり、ウェッジシェイプのデザインに力感を込めるため「VHRグラヴァーベル」社製の特殊ガラスを使用した。

 このガラスは車内からは半透明に映る一方で、外界からは斜めになったボディ表面と一体化して見えるという、普通のガラスには望めない効果を生み出していた。

 またこのカラーボでは、ドアも新しいアイデアに基づいていた。ガンディーニが飛び立とうとする昆虫の羽根の付け根からインスピレーションを受けたという、シザース式の跳ね上げドアは、カラボ(イタリア語でオサムシのこと)というペットネームにもインスピレーションを与えていた。

 のちにガンディーニとベルトーネが世界を驚嘆させる、ランボルギーニ「クンタッチ(カウンタック)」のデザインの出発点になったことでも知られるカラボでは、ほかにもノーズの先端とテールの縁を蛍光色でペイントすることで周囲からの視認性を高め、安全性を向上させるなど、イノベーティブなポイントには事欠かないクルマとなっていたのだ。

 現代の目で見ても興味深いことこの上ないカラボも、当初は生産化を見越してのスタディモデルであった。しかし残念ながら生産に移されることはなく、アルファ ロメオがメカニズムだけでなく、デザインの面でもアヴァンギャルドであることを証明するチャンスは永久に失われてしまう。

 そしてパリ・サロンでの役目を終えて、世界各国のディーラーで巡回展示されたカラボは、ロンドンにてアラブ某国のプリンスが一定期間所有していたという。しかし、そののち比較的早い時期にアルファ ロメオに戻され、1976年12月にムゼオ・アルファ ロメオが初めて設立された際には、既に展示されていた。

 ちなみに、ティーポ33系をベースとするベルトーネ第2のプロポーザルは、カラーボの発表から8年もの歳月を経た1976年に製作されたアルファ ロメオ「ナヴァホ」なのだが、こちらはまた別の機会に改めてご紹介することにしたい。

【画像】ベースは同じでも三者三様のコンセプトカートは?(14枚)

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