人工呼吸器の生産能力が240倍に!? 新型コロナ対策で車部品メーカー「マレリ」が動いた理由とは

年産100器から年産2万4000器まで生産能力向上! 最初の納入先は?

 マレリが生産するのは、新型コロナ対応に機能を絞りながら、優れた性能を持つ人工呼吸器です。

人工呼吸器について説明するマレリの担当者
人工呼吸器について説明するマレリの担当者

 人工呼吸器にはふたつのタイプがあります。風船などに空気を入れるときに使われる足踏みポンプのような、ピストンで空気を送るタイプ(救急搬送などで使われる手押しの人工呼吸と同じ)と、空気を送る量を電子的なバルブ=ソレノイドで制御するタイプ。

 簡単な構造の前者も緊急時には役立つが、空気を送る量を過大にすれば肺に圧力を掛けて損傷を与えてしまい、少ないと酸素量不足になります。一方、後者のシステムなら上限圧力を決めて空気を送ることができ、肺に損傷を与えない空気量を上限まで送ることが可能です。

 メトランの人工呼吸器は繊細な制御が要求される未熟児などに使われており、高い性能を持ちます。

 ちなみに自動車産業はこういった人工呼吸器を生産出来る技術力を持っているけれど、制御などのノウハウがありません。

 また、医療関係の機器作りは認可などの問題もあります。マレリのように既存の医療機器メーカーの生産支援をするのがもっとも有用だと思います。

 ちなみにメトランの生産能力は年産100器。マレリなら年産2万4000器まで可能とのこと。

 その後、幸いに我が国は新型コロナの感染がフラッシュオーバーしなかったため、日本政府(経産省)からのニーズこそ無くなったものの、世界規模で見たら依然として人工呼吸器は圧倒的に足りていません。

 ということから、最初のロットはボリビアに送られます。続いてベトナム赤十字向けを生産するとのこと。

 日本向けはどうなるのでしょうか。前述の通り経産省依頼の開発プログラムが無くなったため、日本での医療承認は取れておらず、医療現場への投入予定は無し。

 ただ、マレリが生産した人工呼吸器は、間違いなく人の命を救います。1器あたり確実に1人。いや、ボリビア向けは10人以上の命を救うことでしょう。

 もし今後日本で新型コロナがフラッシュオーバーしても、十分な生産能力です。大いに心強く思います。

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Writer: 国沢光宏

Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。

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