完全ETC化で高速道路の料金所が無人になる!? 自動車交通の未来像とは
自動車社会はどう変革していくのか?
ETCとはどのような仕組みでしょうか。
エレクトロニック・トール・コレクションシステム(自動料金徴収システム)の略称です。欧米では、通行料金をトール、またはトール・フィーと表現します。
ETCの原理は、道路側にある発信機からの電波を通じて車載機器と通信することで、事前に登録してある利用者のクレジットカード情報と車体情報を照合。クレジットカードで通行料金が支払えるという仕組みです。
日本では、車載器に異なるETCカード挿入しても対応する機器形式ですが、主にアメリカでは道路管理会社から貸与される薄い箱のような形状の受信機器をフロントガラス内側に自分で張り付けるケースが多くあり、日本のようにカードの入れ替えはできません。この場合は、受信機器の使用には、数十ドルの保証料がかかるのみです。
日本型ETCの車載機器として高価ですが、メリットとしては、道路インフラ側と車載機器側との双方向でのデータ送信を使ったさまざまなサービスにあります。
さらには、都道府県警察や道路管理者が道路交通情報を共有するシステム、「VICS(ビックス)」との連携です。世界に先駆けてカーナビが普及したのも、VICSがカーナビを裏支えしてきたからです。
ETCの双方向データサービスでは、ETCスポットとして2011年から全国展開し、その進化版であるETC2.0として2015年からサービスを開始しました。
それぞれの導入の少し前、筆者(桃田健史)は国土交通省道路局の関係者からシステムの運用方法について詳しい話を聞いたり、説明会に参加しています。
ETCの技術とサービスはこれまで、着実に進化してきたことは確かですが、同時期にスマートフォンの急激な普及と、インターネットサービスの急激な多角化が進みました。
その結果、ETC2.0が当初目指していたサービスの一部は、スマホのアプリで簡単にこなせる場合もあります。そんな社会変化を踏まえて、ETC2.0の意義について根本的な議論が必要になってきたとも感じています。
そしていま、国による高速道路の完全ETC化の議論が本格化してきました。
赤羽国土交通大臣は、その課題のひとつとして、クレジットカードを所有しない人たちへの対応などを指摘しています。
一般的なキャッシュレス化では、さまざまなスマホアプリが併存しており、自動車交通でのキャッシュレス化についてより広い視野の議論が望まれます。
さらにいえば、こうした大きな時代の変わり目を、国や業界団体、自動車メーカーがどう認識し、どのような未来像を描いていくかが大きな課題だと思います。
1990年代からこれまでは、カーナビ、ETC、ドライブレコーダーは、自動車に対する後付け装備という解釈でした。
それが最近では、トヨタがディスプレイオーディオと称してカーナビの標準装備化を推奨し、新型「ハリアー」でドラレコ標準装備化の動きが始まっており、将来的には当然、ETCの新車標準化も考えられるでしょう。
その上で、自動車産業は今後、データビジネス化が加速することが確実な情勢です。
完全ETC化は、ターンパイク創世記から長らく続いてきた「単純な料金徴収」という考え方とはまったく違い、自動車ビックデータ化時代への本格的な幕開けであることを、ユーザーも認識しなければならないと感じます。
Writer: 桃田健史
ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。
有人ブースの廃止が大量失業に繋がらなければいいですね。
利便性やクレジットカード持てない場合など、ETC専用化ありきの意見ばかりで雇用面の意見はあまり見受けられませんね。
料金所には、かなり高齢の方も多く見受けられます。
特に地方へ行くとかなりの割合だなと感じます。
年金をもらえているはずの高齢でも働かなくてはならない事情があると推察します。
料金所のブースって高齢者雇用の受け皿としての役割は十分あるのではないでしょうか。