車椅子ライダーがサーキットを走った!! 『Side Stand Project』走行体験会で見たその活動とは?

一般社団法人SSP(Side Stand Project)は、「障がいを負ってもバイクに乗りたい」という気持ちに応えるため「パラモトライダー」走行体験会を開催しました。

「障がいを負ってもオートバイに乗りたい」その気持ちに応えたい

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 バイクは全身を使って操る乗り物。病気や事故により障がいを負ってしまった方は、バイクに乗ることはできません。いままでは、誰もがそう考えていました。ですが、その認識が変わろうとしています。

左から、パラモトライダー走行体験会参加者の生方潤一さん、SSP代表の青木治親さん、青木琢磨さん、参加者の野口忠さん、青木宣篤さん。他にも多くのスタッフがボランティアで協力。ライダーの善意がサイドスタンドプロジェクトを動かしている

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 一般社団法人SSP(Side Stand Project)が開催した「パラモトライダー」走行体験会で、車椅子生活を余儀なくされてバイクを降りたライダーが、再びバイクで走り出しました。

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 SSPは、元世界GP125クラスチャンピオンにして、現在はオートレースの選手として活躍する青木治親(あおきはるちか)さんが代表を務める一般社団法人です。その目的は、障がい者の皆さんにもバイクを楽しんでもらうことです。

 治親さんは、バイクレーサー一家として有名な“青木三兄弟”の末弟。ひとつ上の兄、青木琢磨(あおきたくま)さんは、世界GP500ccクラスでの活動を開始して間もなく、テスト走行中の事故で半身不随となる障がいを負い、バイクレーサーの道を断たれてしまいました。

 琢磨さんは4輪レーサーに転身し、車椅子のレーシングドライバーとして数々の実績を打ち立てますが、バイクで走ることへの想いは断ち難いものであったそうです。その夢を叶えるために、SSPの活動がスタートしました。

 2019年の鈴鹿8耐で、琢磨さんは見事なデモンストレーションランを披露しました。青木三兄弟が助け合っての夢の実現は、大きなニュースとなり人々に感動を呼びました。その後、元世界GP500ccクラスチャンピオンで、やはり車椅子生活を送っているウェイン・レイニーさんも鈴鹿サーキットのイベントで走りを披露。下半身不随であっても、バイクに乗ることは可能だと世の中にアピールしたのです。

琢磨さんが持ち込んだのは、なんと注目の最新スーパースポーツモデル、ホンダ「CBR1000RR-R」をハンドコントロール化したマシン。並のライダーでは、到底太刀打ちできないスピードで走行。さすがはGP500で世界を相手に戦ったライダー。驚きというべき他ない走りだった

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 これまで、そうした活動を積み重ねてきたSSPですが、プロジェクトを前進させるためにより多くの障がい者の方にバイクで走ってもらうことを決断し、2020年7月16日、千葉県にあるサーキット袖ヶ浦フォレストレースウェイで、パラモトライダーに向けた走行体験会を開催しました。

 参加したのは生方潤一さんと野口忠さん。共にバイク経験者で、事故で下半身不随の障がい者となった方達です。車椅子生活を送るようになってからは、当然バイクには乗っていません。今回の走行体験会に向けて事前に練習を行ったわけではなく、お2人共に、バイクにまたがるのは20年以上ぶり。その表情からは、緊張した様子が伺えました。

 用意されたバイクに加えられた改造は、電気式のシフトチェンジ装置が追加されハンドルに設けたスイッチでシフトチェンジが可能なこと、足がステップから離れないようにビンディング化されていることの2点だけ。驚くべきことに、これだけで下半身不随の人でもバイクを操ることができるのです。

 安全を期して、駐車場で補助輪付きのバイクを使用しての練習からスタート。2人のパラモトライダーは、あっけないほど簡単に走行することに成功します。すぐさま、サーキットの本コースに移っての走行体験が始まりました。

スタッフが驚くほどの速さで走り出した生方さん。ご本人いわく「ゆっくり走ってフラつくと危ないと思ったので」とのことだが、20数年ぶり、しかも下半身が動かないとは思えない安定感だった

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 青木三兄弟の長兄で、現役のレーシングライダーである青木宣篤(あおきのぶあつ)さんが先導。パラモトライダーがその後に続き、治親さんがしんがりを務めます。すでに走行に慣れている琢磨さんは、フリーでサーキットを疾走。さすがGPライダーという見事な走りを見せていました。

 生方さん、野口さんも無事にサーキット走行を体験。走り終えた後の、なんともいえない笑顔が印象的でした。

 今回の走行体験会は、安全確保のため過去にバイクレースの経験のあるパラモトライダーを選定して行なわれました。一言に下半身不随と言っても、脊椎を損傷した箇所によって障がいの程度が異なり、全ての人がバイクを楽しめるというわけではないそうです。SSPでは理学療法士の協力を得て、安全を確保しながらが多くの障がい者の方に向けて活動の幅を拡げていく予定とのことです。

 バイクで走る喜びを奪われるのは、どんなに辛いことでしょう。SSPの活動は、そうした絶望の淵にいる人を救い出せる可能性を持っています。課題はまだまだ多いとのことですが、これからも続けて欲しい活動です。いや、バイクを楽しむライダー全体で進めるべき活動なのかもしれません。

パラモトライダーがスタートする時と、ピットに戻ってストップする時は、スタッフがガッチリとサポート。スタッフに話を聞いたところ「パラモトライダーが喜んでくれると、自分も嬉しいんです」と語った。気持ちのありかたが素晴らしい

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