前席に3人座れた!? 個性的だった「フロント3人掛け」のクルマが絶滅した訳
以前は、クルマの前席(1列目)に3人が座れるクルマが存在していました。しかし現在では、一部のトラックやバンなど商用車に「フロント3人掛け」が残っている程度で、乗用車では絶滅状態です。なぜ消滅してしまったのでしょうか。
前席の快適性を3人で味わえる「フロント3人掛け」
以前は、前席(1列目)に3人が座れるシートを装備したクルマが存在していましたが、現在ではトラックやバンといった商用車の一部に残っているのみで、乗用車においては絶滅状態です。
フロント3人掛けのクルマの代表格といえば、アメリカ車です。これはトラックを日常の足としても活用するアメリカならではのクルマ文化が大きく寄与しているといえます。
トラックやバンは「多くの荷物や人を移動させる」ための働くクルマなので、限られたスペースで多くの人を乗せるため、フロントに3人分のスペースを確保したベンチシートを採用するのが定番となっていったといえます。
このフロントがベンチシートのモデルは、助手席側から運転席への移動はもちろん、荷物をすぐ横に置けたり、便利に使えることが特徴となっていました。その利便性のひとつとして、前列に3人座ることができたというわけです。
また、以前は多く存在していた、ステアリングの根元にシフトを配置した「コラムシフト」とも関連していて、センタートンネルなどシフトを配置するスペースを省略できたこともフロント3人掛けには都合が良かったといえます。
現在でもアメリカではトラックを乗用車として利用するケースも多く、そのような文化が背景にあって、映画やドラマなどでもトラックの前列に3人座っているシーンが多く使われています。
国産車でもフロントベンチシートを採用した乗用車はいくつか存在しましたが、必ずしも3人掛けではありませんでした。
フロント3人掛けとするモデルには、ベンチシートのほかに、中央部分を少しオフセットして配置した車種や、逆に運転席を中央に配置し左右に助手席を設けたモデルなどもありました。
なぜフロント3人掛けのモデルは減少してしまったのでしょうか。
もっとも大きい理由が、『衝突安全性』の問題です。現代のクルマは、ぶつからないための「予防安全」と、いざというときに乗員の命を守る「衝突安全」を両立させる必要があります。
中央の座席にも3点式シートベルトやヘッドレストの装着が義務付けられたこともあり、フロントに3つ配置するためには大幅に車内幅を広げる(=クルマの全幅を拡大する)必要があります。
最近のクルマは年々大型化しているとはいえ、単純に広げればいいというわけにもいきません。
しかも乗車定員を増やすためなら、3列目シートを配置するほうが現実的ですし、実際に5ナンバーボディでも3列シートのクルマはあります。
またベンチシートのメリットである凹凸の少ないシート形状は、しっかり体をホールドできないというデメリットもあります。
さらにミニバンでは可能な前後シートのウォークスルーが、フロントベンチシートではできないこともあって、無理してフロント3人掛けにこだわる必要がなくなった結果、採用するクルマが自然淘汰されたというのが実情のようです。
それでも独特の魅力とベンチシートならではの利便性に慣れたユーザーはアメリカには多く、数年前まではトヨタの海外専用車種「タコマ」や「タンドラ」といったピックアップモデルに採用されていました。
フロント3席どころかまともな後席3席の車が無い。真ん中がおまけで残念な車ばかり。四人乗りでいいなら軽を買うよ