アルファ ロメオ8Cにまつわるアナザーストーリー3選
ストーリー3:独自の発展を遂げた、名門ザガートの異色作
2010年の「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」において正式発表された、カロッツェリア・ザガート製のレーシングベルリネッタ「アルファ ロメオTZ3コルサ」もまた、実はその遥か以前にスポルティーヴァ・エヴォルータ計画のデザインコンペに参加していたコンセプトモデルから発展したものでは……? とする見方も、これまで根強く語られてきている。
TZ3コルサは、1960年代に製作されたアルファ ロメオの純レーシングGT「ジュリアTZ/TZ2」のデザイン様式とボディラインを引用し、21世紀初頭における最新のメカニズムとV8エンジンを投入して製作したコンペティツィオーネである。
車体構成は、モノシェル構造を成すカーボン製チューブラーシャシに、同じくアルミ製のチューブラーフレームと、ザガート社のチーフスタイリストを長年務めてきた、原田則彦氏のデザインによるボディを組み合わせたとのことだった。
「チューブラー」をことさらに強調しているのは、往年のジュリアTZ/TZ2が鋼管スペースフレームを採用していた故事に倣ったもの。つまり「TZ」の名に正統性を持たせるためだったと思われる。
一方、フロントミッドシップに搭載されるパワーユニットは「ドライサンプ潤滑システムを備える4.2リッターV型8気筒」と発表されたものの、その詳細については明らかにされなかった。
しかしこの排気量から推測すると、マセラティ製の4.2リッターV8がベースとされていると見て間違いない。
ところが「スポルティーヴァ・エヴォルータ」各案に共通するマセラティV8はさておき、独自のチューブラーフレームなどの車体構成は、たとえスーパーカーといえどもコストや生産性の面で折り合わないと判断されたことは、想像するに余りある。
結局TZ3プロジェクトは「スポルティーヴァ・エヴォルータ」とは別のプロジェクトとして、ドイツのザガート・コレクターMartin Kapp氏の求めに応じて製作された1台のTZ3コルサのみに終わってしまった。
しかし、2012年にダッジ・バイパーのシャシやメカニズムを流用した「TZ3ストラダーレ」として、TZ3プロジェクトは完結。近年のザガート少数製作モデルの慣習にしたがって、9台が生産されたといわれている。
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