アルファ ロメオ8Cにまつわるアナザーストーリー3選
2003年に綺羅星の如く登場したアルファ ロメオ「8C」のコンセプトカーは、ほぼそのままのデザインで市販化された。しかし、「8Cコンペティツィオーネ」が実現化するまでには、複雑なお家事情やそこから派生したストーリーがあった。
ストーリー1:キーワードは“スポルティーヴァ・エヴォルータ”
アルファ ロメオ「8Cコンペティツィオーネ」は、第二次世界大戦の前後に栄華を築いたアルファ ロメオの伝統を復活させたスーパーカーだ。
そのストーリーが幕を開ける前夜には、プロローグともいうべきコンセプトカーの存在があった。1996年パリ・サロンにおいてアルファ ロメオが発表した「ヌヴォラ(Nuvola)」である。
このプロジェクトを具現化すべく開始されたのが、アルファ ロメオ社内で「Sportiva Evoluta(スポルティーヴァ・エヴォルータ)」と名づけられた、市販スーパースポーツカーのプロジェクトである。
ヌヴォラ以来となるフロントエンジン後輪駆動/2シーターという基準のもと、アルファ ロメオは複数のカロッツェリアやデザインスタジオに、プレゼンテーションへの参加をもちかけた。
しかしデザインコンペを勝ち抜いたのは、当時デ・シルヴァ氏の後継としてチェントロスティーレを率いていた、アンドレアス・ザパティナス氏による社内デザイン案だった。これが「8Cコンペティツィオーネ」となった。
8Cコンペティツィオーネは、2003年9月のフランクフルト・ショーに、まずはコンセプトカーとして出品。その名称は、戦前/戦後を挟んだ時期に製作されたアルファ ロメオの至宝「8C」シリーズにオマージュを捧げたものである。
ショーデビューの際に公表されたスペックによると、アルミ+コンポジット製のスペースフレームに、カーボンファイバー製ボディを組み合わせ、フロントミッドに搭載するV型8気筒4.2リッター(排気量から判断すればマセラティ用?)+機械式スーパーチャージャーを組み合わせた400ps超級エンジンで後輪を駆動。最高速度は300km/hを超えると謳われていた。
ところが、カロッツェリアへの供給を前提としていた専用スペースフレームの計画は、理由も明かされないままキャンセルされることになる。そのためか、社内デザインである8Cコンペティツィオーネの生産化プロジェクトも、一時期は棚上げになってしまったかに見えた。
それでも翌2004年の「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラ・デステ」コンセプトカー部門で金賞を得たことによって、再び力を得た8Cコンペティツィオーネは、2006年のパリ・サロンにて「500台限定生産、2008年からEU圏内でデリバリー開始」という生産スケジュールとともに、ついに生産バージョンの正式なワールドプレミアにこぎつけた。
生産型の8Cコンペティツィオーネは、スティール製のプラットフォームと総カーボンファイバー製パネルを組み合わせたボディに、マセラティのV8と基本が同じとなる450psを誇る4.7リッターV8を搭載。シングルクラッチ式6速ロボタイズドMT「Q-セレクト」を組み合わせ、最高速290km/h、0-100km/h加速4.2秒以下という高性能を標榜する、正真正銘のスーパーカーとなった。
そして全世界で500台という限定枠を巡って、世界中のアルフィスタの間で争奪戦が展開された上に、現在のコレクターズカー国際マーケットにおいても、新車時の販売価格(日本国内では2259万円)を遥かに凌ぐ高値で流通しているようだ。
加えて、2005年の北米「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」にてコンセプトモデルがデビュー。翌2006年にはクーペ版と同様ヴィラ・デステで金賞を獲得していたオープン版「8Cスパイダー」も、8Cコンペティツィオーネの生産が終了した2009年からシリーズ生産されることが決定。同じく世界限定500台のみが製作・販売されることになったのである。
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