最近のクルマの荷室はなぜ広くなった? 省燃費対策も関係する意外な理由とは
最近のクルマは広い荷室が確保されており、リアゲートを開けると容量の大きさに驚くこともあります。なぜ、広い荷室を確保できるようになってきたのでしょうか。
荷室の拡大は、厳しい燃費競争が生んだ産物だった?
日々の買い物や旅行などに使用する場合、1列目や2列目シートの乗り心地と共に、荷室の容量も重要となります。場合によっては荷物を荷室に乗せきることができず、足元に置いているという人も多いのではないでしょうか。
しかし、近年はクルマに必ず装備されていたあるものが無くなったことにより、荷室が大きく拡大。さらに、ほかにもメリットが生まれているといいます。昨今のクルマは、いったいどのような変化を遂げているのでしょうか。
近年のクルマに搭載されることが少なくなった装備は、「スペアタイヤ」です。
スペアタイヤは「テンパータイヤ」とも呼ばれ、通常よりも極端に細いタイヤと、黄色のホイールで構成されています。
タイヤがパンクした際に用いる緊急用のタイヤとして、以前は必ず装備されていました。
スペアタイヤは、荷室の床(ボード)の下に収納されていることが一般的で、純正タイヤのサイズにもよりますが、縦横1m、深さ8cmから15cmくらいのスペースを使用します。このスペアタイヤが廃止されたことで、アンダースペースが拡大された車種が、多数あるのです。
例えば、トヨタ「ヴィッツ」は、2005年に発売された2代目まではスペアタイヤを搭載していましたが、2010年に発売された3代目では廃止されています。
その結果、2代目ではリアゲートからリアシートまでフラットになっていた荷室の床が、3代目では1段低くなり、アンダースペースが拡大されました。
また、3代目「プリウス」をベースに開発された7人乗りの「プリウスα」や、プリウスαのOEM車であるダイハツ「メビウス」は、荷室のボードの下に大型と小型に分割されたデッキアンダートレイを備えています。
このように、スペアタイヤが無くなったことで、アンダースペースという新たな収納を生み出しましたが、なぜスペアタイヤは姿を消してしまったのでしょうか。
その理由のひとつに、2009年にはじまったエコカー減税があります。
エコカー減税は、国が定めた燃費基準をクリアした車種に対し、税金が軽減されたり、免除される制度です。この基準を達成するために、自動車メーカーはクルマを「軽くする」努力をおこなってきました。
そして、緊急用のタイヤであるスペアタイヤは、1本あたり10キロから15キロともいわれます。厳しい燃費を達成するために、ネジ1本という部品単位でもクルマを軽くしたい自動車メーカーにとって、スペアタイヤを廃止するメリットは非常に大きなものといえるでしょう。
また、「スペアタイヤの車載義務が無くなった」というのも理由のひとつです。かつては車検において、スペアタイヤの装備は義務とされていましたが、現在では廃止されています。
こうした理由から、スペアタイヤを装備しないクルマが増えているのです。
スペアタイヤ(テンパータイヤ)を、後付けオプション扱いとして用意している車種と、そうではない車種が混在している形でありますよね。私の個人的な意見として、オプションカタログにスペアタイヤ(テンパータイヤ)が掲載されているメーカーや車種には、良心的な感情を持ちますが。