名前の由来が「拍車」だったベントレー「フライングスパー」に、2020年さらに拍車がかかる!

21世紀に至る素晴らしき名跡「フライングスパー」

「ベントレーSタイプ・コンチネンタル・フライングスパー」は1957年9月に北米向けが1台、およびイギリス国内向けに2台が製作されたのを皮切りに、50台が生産される人気作となった。

ベントレー「S2フライングスパー」
ベントレー「S2フライングスパー」

 当時のロールス・ロイス社とH.J.マリナーはフライングスパーの成功を見て、この基本デザインをより大型のリムジン用シャシ「R-RファントムV」に応用することを考えていたようで、実際にワンオフの試作車両も製作したのだが、フライングスパーの絶妙なバランスには至らなかったのか、こちらは1台きりに終わってしまう。

 そののち1959年に、スタンダードのSタイプが、6230ccV型8気筒OHVエンジンを搭載したS2に進化すると、Sタイプ・コンチネンタルも「S2コンチネンタル」に発展した。

 この時代のH.J.マリナー製コンチネンタル・フライングスパーは、114台が作られたという。

 さらに3年後の1962年になると、4灯ヘッドライトが特徴的な「S3コンチネンタル」へと進化を果たす。このS3時代になると、H.J.マリナー製コンチネンタルの主役の座は、完全にフライングスパーへと譲られることになった。

 S3コンチネンタルのH.J.マリナー製2ドア・スポーツサルーンがわずか3台しか作られなかったのに対して、S3コンチネンタル・フライングスパーは83台(87台説もあり)が製作されたといわれているからだ。

 またこの時期には、ベントレーS3の姉妹車「R-RシルヴァークラウドIII」に、H.J.マリナーが「フライングスパー」ボディを組み合わせたスペシャル車両も、わずか14台ながら製作されているという。

 加えて、やはり第二次大戦前からR-R/ベントレーのスペシャルボディを製作していた老舗コーチビルダー「ジェイムズ・ヤング」社も、H.J.マリナー製フライングスパーの成功に刺激を受けたのか、同じくSタイプ系のコンチネンタルをベースとした4ドア・スポーツサルーンを少量のみ製作。現在では、こちらもフライングスパーと呼ばれてしまう傾向があるようだが、厳密にはやはり別のモデルと見るべきだろう。

 ともあれS3コンチネンタル・フライングスパーは、1966年1月に最後の1台が出荷されたのを最後に、その華々しい歴史の幕を閉じた。

 ところが39年もの月日が流れた2005年春のジュネーヴ・ショーにて、フライングスパーの歴史の第二幕が開くことになる。

 新世代ベントレーの旗手として2003年に登場したコンチネンタルGTシリーズのサルーン版として、懐かしい「フライングスパー」の名が与えられたのだ。

 それからのフライングスパーの隆盛は、今や誰もが知るとおりである。コンチネンタルGTシリーズが2代目となったことを受けて、2013年には新たに「コンチネンタル」のペットネームを持たない独立した「フライングスパー」の名のもと、第2世代へと進化した。

 そして、ついに日本の路上に降臨した新型フライングスパーは、旧き良き「ミュルザンヌ」に代わって、ベントレーのフラッグシップとなることが決定したのである。

【画像】ベントレーの歴代フライングスパーを写真でチェックする!(12枚)

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