2000年代に大流行したフランスメーカーの人気が再燃!? いま「プジョー」が好調な理由とは

MPVの「リフター」やコンパクトハッチの新型「208」の上陸が起爆剤になる

 それではプジョーは2019年、どんなニュースがあったのだろうか。

 目立つのは、フラッグシップモデルとなる新型「508」の3月からのデリバリー開始だ。2019年3月のプジョーの新車登録台数は1452台を記録している。だいたい600台から1000台ほどで推移する2019年の月間販売台数で、3月が一番多い月となった。この増加分だけでも、前年比プラス分に相当する。

2019年に先行販売された「リフター」。正式導入は2020年となる
2019年に先行販売された「リフター」。正式導入は2020年となる

 では508以外に新型車は? といえば、2019年の新型車投入はなかった。その代わりに、新パワートレインの導入が進められた。

 まず、5月に「308」に1.2リッターのガソリンターボエンジンと8速ATの新型パワートレインを追加した。同月、SUVの「3008」と「5008」にも1.6リッターのガソリンターボエンジンと8速ATの新パワートレインを追加している。

 ちなみに10月にはMPVの新型「リフター」を先行発売。なんと1日で予約完売するほどの人気を集めている。ただし納車は2020年なので、販売台数の貢献は2020年からとなる。

 また、プジョーは過去3年のうちに日本市場に「2008」「3008」「5008」という3台の新型SUVを投入してきた。つまり、2019年のプジョーの1万台突破は、こうした新型SUVたちと新型508の貢献によって実現したといえるだろう。

 さらに見逃せないのが販売網の強化だ。

 プジョーは2002年より、販売店をブルーボックスという新CIでの統一を進めてきた。ブルーボックスとは、ディーラーの店舗をプジョー・ブルーと呼ばれるブルーで、かつボックス形状のシンプルな外観にするもの。そのブルーボックス化を約15年かけて、日本全国の販売拠点に展開。2017年には、そのほとんどをブルーボックス化することに成功している。

 全国に78ある販売拠点のすべてブルーボックス化できていることは、ブランドアピールには大きな力になっているはずだ。

 まとめてみれば、プジョーの最近の好調さは、SUVをはじめとするラインナップの拡充とたゆまない製品のブラッシュアップ、そして販売網の強化に理由があるといえるだろう。言ってしまえば、基本中の基本だ。派手なヒット車がなくとも、販売を伸ばせたのは地力を高めたとも表現できる。

 そんなプジョーに2020年に新たに投入されるのが、前述にあるとおり事前販売で大人気を集めたMPVであるリフターだ。

 また、欧州では新型208もすでに発表されている。コンパクトな208は、プジョーの主力モデルのひとつ。2003年当時のプジョー躍進にも208の先々代モデルである206が大いに貢献したように、今後のプジョーにとって新型208の投入は大きな期待となる。

2020年に日本上陸予定の新型「208」。ピュアEVの「e-208」も登場する予定だ
2020年に日本上陸予定の新型「208」。ピュアEVの「e-208」も登場する予定だ

 現在のコロナ騒動によって、クルマの販売は苦境に立たされている。しかし、それが収束してしまえば、プジョーには明るい未来が待ち構えているといえるだろう。地力がついたところに、リフターと新型208という新型車が追加されるのだ。

 うまくいけば、2003年の1万5330台を超える成績も夢ではないかもしれない。2020年は無理であろうが、2021年のプジョーには相当に期待できるはずなので、注目したい。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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