打倒スポーツカーを目指したセダンがあった!? 往年のハイパワーセダン3選
現在、高性能なセダンは国内外に数多く存在します。スポーツカーに負けないハイパワーなエンジンを搭載したセダンは、それだけでも魅力的です。そこで、かつて販売された往年の高性能セダンを、3選ピックアップして紹介します。
スポーツカーを追いかけまわしたセダンとは
日本の自動車市場ではセダン人気が低迷して久しいですが、現在販売中のセダンは高性能なモデルが多い印象です。
たとえば、2019年には405馬力を発揮する日産「スカイライン 400R」が発売され、現行のスバル「WRX S4」は300馬力を誇ります。
さらに1990年代から2000年代には三菱「ランサーエボリューション」やスバル「インプレッサ WRX STI」といったスーパーセダンがありました。
そこで、これらのモデルよりも遥か昔に登場した高性能セダンを、3車種ピックアップして紹介します。
●プリンス「スカイラインGT」
第二次大戦以前から飛行機製造をおこなっていた立川飛行機をルーツに持つプリンスは、数々の高性能車を世に送り出してきました。
そのなかでも伝説的な存在となっているのがプリンス「スカイラインGT」です。
初代スカイラインは1957年に誕生し、外観は当時のアメリカ車のようなデザインで、エンジンは1.5リッター直列4気筒OHVを搭載。
1963年に2代目になると、外観は飾り気の無いシンプルなデザインに一新されるものの、エンジンは1.5リッターのままでした。
そうしたなか、1962年に国際格式のレースがおこなえる本格的なサーキットである「鈴鹿サーキット」が完成すると、高速時代に突入しようとしていた日本のモータリゼーションの背景もあって、各メーカーのレース熱が一気に高まります。
1964年、鈴鹿サーキットで開催された「第2回 日本グランプリ」には、プリンスが1.5リッターのスカイラインをベースに仕立てたスカイラインGTで出場しました。
エンジンは「グロリアスーパー6」用の2リッター直列6気筒OHCを搭載しましたが、そのままではエンジン全長が長すぎたため、ホイールベースを200mm延長して搭載するという斬新な手法で100台を製作して規定をクリアします。
また、レース車両にはウェーバー3連キャブ、5速クロスミッション、LSDなどが装着されていました。
そして、決勝レースでは純レーシングマシンに限りなく近いポルシェ「904カレラGTS」に果敢に挑み、レース終盤では、わずかな時間でしたが904カレラGTSを抜いてトップに立ち、観客から拍手喝采を浴びます。
優勝こそ逃しましたが2位から6位を独占し、この出来事を報じた新聞は、スカイラインを「羊の皮を被った狼」と評しました。
1965年に、スカイラインGTは量産車として手直しをされて「スカイライン2000GT」となり、以降は同車のトップグレードに君臨しました。
●メルセデス・ベンツ「300SEL 6.3」
メルセデス・ベンツの高性能モデルというと、真っ先にメルセデス・AMGが思い浮かびますが、かつては自社でも高性能なセダンを生産していました。
有名なところだとポルシェと共同開発した「500E」がありますが、それ以前にすごいモデルが存在しています。
1965年に発売されたメルセデス・ベンツ「W109型」は、いまに続く「Sクラス」の源流といえるモデルで、このW109型の最上級モデルが、1967年に発売された「300SEL 6.3」です。
300SEL 6.3には、当時ショーファードリブンのリムジン「600」用の6.3リッターV型8気筒エンジンが搭載されました。
外観からはフォーマルなセダンにしか見えませんが、最高出力は250馬力を発揮し、0-100km/h加速は6.5秒と当時の911に匹敵。実際に「スポーツカーを追い回せるセダン」と呼ばれていたといいます。
なお、この300SEL 6.3をベースにAMGがチューニングした「AMGメルセデス 300SEL 6.8」が、1971年の「スパ・フランコルシャン24時間レース」でクラス優勝を飾り、総合でも2位となるなど、これがきっかけでAMGはメルセデス・ベンツのチューナーとして名が知られるようになりました。