日産が反撃開始!? 新型ノートや新たなSUV投入で国内5位からの脱却目指す
海外重視だった販売戦略が、2020年にようやく変わる!?
このほかにも、「ノート」のフルモデルチェンジが2020年内におこなわれる可能性が高いです。ノートは2016年にハイブリッドの「e-POWER」を加えて堅調に売れていますが、現行型の発売は2012年に遡り、すでに約8年を経過するからです。
ホンダ「フィット」のように、従来路線を踏襲してフルモデルチェンジする者と思われますが、5ドアハッチバックのカテゴリは、世界的に売れ行きを下げています。これはSUVが人気を得た影響も大きいです。そのためにシトロエン「C3」は外観がSUV風になり、ボルボ「V40」は現行型を最後に生産終了し、SUVの「XC40」のみになります。
このような経緯もあり、ノートは派生モデルとしてスライドドアを備える3列シートミニバンを加える可能性もあります。トヨタ「シエンタ」やホンダ「フリード」のライバル車です。
ちなみに2000年代には、「キューブ」の派生モデルで3列シートを備えた「キューブキュービック」とは違う、コンパクトミニバンの企画が日産内部で進行していました。それが2008年に発生したリーマンショックによる世界的な不況により、凍結されました。ノートの3列シートミニバンは、このアイデアが再び復活したともいえるでしょう。
それにしても現在の日産車は、ラインナップが全般的に古いです。小型/普通車は、「フーガ」「エルグランド」「マーチ」「ジューク」など、2010年までに発売された車種が圧倒的です。2011年以降は新型車の発売が1年から2年に1車種程度に減り、日産車の売れ行きも下がりました。
そのなかでノートは、e-POWERを加えて売れ行きを伸ばし、小型/普通車の販売ランキングでは、2017年と2019年は2位、2018年は1位になりました。
ミニバンの「セレナ」も好調で、2018年にはミニバン1位、2019年は同2位と健闘しています。それなのに、日産のメーカー別販売ランキング順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位です。
この矛盾が生じた理由は、いまの日産の国内販売が、限られた売れ筋車種に依存しているためです。売れ筋モデルであるデイズ/デイズルークス、ノート、セレナの2019年の販売台数を合計すると、国内で販売された日産車全体の65%に達します。その結果、ノートやセレナは絶好調で売れているのに、メーカー別販売順位は5位になってしまうのです。
この状況をユーザーから見ると、欲しい日産車が見当たらないから、ノートやセレナを選んでいるという現実があります。
日産のセールスマンからは「生産を終えた『ティーダ』や設計が古くなったキューブなどのお客さまは、以前は乗り替えるクルマがなくて困っていました。普通のノートでは、ティーダやキューブのお客さまには物足りないのです。そこにノートe-POWERが登場して、滑らかな運転感覚などの付加価値も生じて、買っていただけるようになりました」という話が聞かれます。
つまりノートの好調な売れ行きは、乗り替えるべき日産車を失ったユーザーの不満の裏返しでもあったのです。
日産の新型車開発が滞り始めた切っ掛けは、先に挙げたリーマンショックです。このときを境に、日産は国内市場の将来性を低く見積り、車両開発を滞らせ、海外重視に変わりました。
日産の世界生産台数に占める国内販売の割合は、1999年には33%でしたが、2009年には18%に下がり、2019年は11%です。国内の売れ行きが下がり、新型車の投入も鈍り、ますます販売が低迷する悪循環に陥っています。
キューブやティアナは生産を終え、その結果、日本は日産にとって11%の市場になったのです。しかし、2020年には新型モデルの投入が予定されており、この流れがようやく変わりそうです。
日産の内部からも「いままでは国内市場を冷遇しすぎだった」との声が聞かれます。カルロスゴーン元会長の退任も無関係ではありません。楽観はできませんが、今後の日産に期待したいです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
業界五位とか言うけど、スズキ、ダイハツ、ホンダは軽を入れての2位〜4位じゃないか。軽の比率が高いところ入れて比較するのフェアじゃない。