クルマの「強制保険」と「任意保険」 知っておきたい補償範囲の違いとは!?
クルマの保険には、必ず加入しなければならない強制保険(自賠責保険)と、そうではない任意保険(自動車保険)が存在します。ふたつの保険はそれぞれどういった違いがあり、「何が」「いくらまで」補償されるのでしょうか。
もしも事故を起こしてしまったら……。
クルマの事故には大きく分けて、「物損事故」と「人身事故」があります。
どちらも事故であることに変わりはありませんが、「物」を壊したか「人」に怪我をさせたかで、保険の適用範囲が変わってきます。
クルマを所有した際に必ず加入しなければならない自賠責保険では、保証の対象が対人賠償に限られます。
しかも、自分が負った怪我については保証の対象となりません。
こうした自賠責保険の範囲と金額は、国土交通省によって定められており、もし相手に怪我をさせてしまった場合、通院、治療、慰謝料、休業補償などを含め、最大120万円が支払われます。
また、後遺症が残ってしまった場合は75万円から4000万円、死亡させてしまった場合は最大で3000万円が支払われます。
交通事故を扱う、ある弁護士事務所は次のように話します。
「71歳の女性が交差点を横断中に右折してきた自動車に轢かれて死亡してしまった事故について、裁判で争った結果5350万円の損害賠償請求が認められた例があります。
この場合、自賠責保険の3000万円を超えた分の2350万円は、自分で支払わなければなりません。
また、交通事故によって膝に障害が残った男性は、約1000万円の損害賠償請求が認められました。
この場合、自賠責保険の限度額内であるため相手への支払いはおこなわれますが、もし加害者自身が膝に障害が残るような怪我を負ってしまった場合は、自身が加入している自賠責では一切保証をしてくれません」
何故、自賠責保険はこのような保障内容となっているのでしょうか。
それには、自賠責保険が「被害者を救済するための保険」であるという経緯に関係しています。
自賠責保険は、1955年に制定された自動車損害賠償保障法によって定められました。
それまでは、被害者側が加害者の故意や過失を立証しなければ損害賠償責任は発生しなかっため、交通事故に遭った被害者は非常に不利な立場だったといわれています。
その不利な立場の被害者を救済する目的で、自賠責保険は登場しました。
自賠責保険は「強制保険」の名の通り、絶対に加入しなければなりません。通常は車検の際に、車検にかかる費用の一部として必ず加入・支払いがおこなわれます。
もしも自賠責保険に加入していなければ、例え車検の期日が残っていたとしてもクルマを運転することはできません。
加入していないクルマを公道で走らせた場合は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金、さらに違反点数6点が科せられます。
免許の停止処分(免停)となるのは、違反点数が6点に達したときなので、強制保険に加入せずにクルマを運転した場合には、必ず30日間の免許停止処分という厳罰が課せられることになるのです。
また、自賠責保険の証明書を所持していない場合も30万円以下の罰金が科せられます。
クルマの車検証入れには、自賠責保険専用のポケットがあるものも多いので、クルマを運転するときには必ず自賠責保険証明書を携帯するようにしましょう。
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自動車保険を扱う三井住友海上火災保険の発表によると、2017年の交通事故発生件数47万2165件のうち、負傷者数は58万850人、死者数は3694人となっています。
交通事故件数は年々減少傾向にありますが、いつ誰がどこで事故に遭うかは分からないため、自賠責保険への加入はクルマを運転する人の義務といえるでしょう。
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