熾烈な新車販売競争が生んだ“燃費スペシャル”!? ただの廉価仕様でない正体とは
近年販売される新車のなかには、燃費性能を重視するあまり“燃費スペシャル”ともいえるグレードが設定される場合があるといいます。いったい、どんな装備が搭載されたグレードとなっているのでしょうか。
ライバルに負けない燃費を実現! その手法とは
近年の新車市場において、ハイブリッドカーは人気のカテゴリですが、販売ランキング上位のモデルのなかには、燃費性能に特化した“燃費スペシャル”ともいえるグレードが設定されていることがあります。
燃費性能を特別に重視したグレードが設定される目的はいったいなんなのでしょうか。また、どのようなユーザーが購入するのでしょうか。
2012年から販売されている日産の現行型「ノート」は、国内市場のコンパクトカー販売台数ランキング首位を2017年から2019年にかけて3年連続で達成しました。
2018年は登録車全体の販売ランキングでも1位となり、近年の日産の国内販売をけん引するモデルとなっています。
また、ノートは販売台数以外でもナンバーワンを取るために「e-POWER S」というグレードが設定されていました。これこそが、前述の“燃費スペシャル”といえるグレードです。
ノートのハイブリッド車(e-POWER車)にはe-POWER Sのほかに「e-POWER X」「e-POWER MEDALIST」「e-POWER AUTECH」などが存在しますが、e-POWER Sはハイブリッド車の中でもっとも安いグレードとなります。
「e-POWER S」にはほかにはない特別な工夫がされているようです。ある日産販売店のスタッフは次のように話します。
「e-POWER Sについては“燃費スペシャル”といってもいいグレードで、余計なものが一切装備されていません。
例えば、マップランプやフロントスピーカーなど、他のグレードでは標準装備されている装備が省かれている上に、なかにはオプション設定すらされていない装備もあります。
結果として、ノートe-POWERのなかではもっとも車重が軽くなっており、車両価格も200万円を切る設定となっています」
実際に、他のグレードは燃料タンク容量が約41リッターなのに対し、e-POWER Sは約35リッターと記載されています。燃料タンクを小さくすることで、車重を軽くする意図があるといえるでしょう。
ある意味で極端ともいえるe-POWER Sですが、どうしてこのような燃費性能に特化したグレードが作られたのでしょうか。その理由は、他社との燃費競争にあるといわれています。自動車業界に詳しい専門家は、以下のように話します。
「『e-POWER S』は、ノートのライバル車にあたるトヨタ『アクア』に対抗するために作られたと考えられます。
アクアは2013年のマイナーチェンジで37.0km/L(JC08モード燃費)という燃費性能を記録しましたが、e-POWER Sはそれを『0.2km/L』上回ることで、ライバル以上の燃費性能を持つことをアピールしたかったのでしょう」
カタログを確認すると、e-POWER SのJC08モード燃費は37.2km/Lと記載され、確かに当時のアクアの燃費を上回っていました。しかし、アクアは2017年のマイナーチェンジでそれを上回る38.0km/Lを達成しています。
なお、最高燃費を達成したアクアのグレード「L」は、e-POWER S同様に装備を簡略化することで車体を軽量化しています。
目には目を歯には歯を、低燃費には低燃費を、とも表現できるような、自動車メーカー同士の意地のぶつかり合いがそこにはあります。
コメント
本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。