一時期大流行した「タイヤに窒素ガスを入れる」サービス どんなメリットがあるの?

レースシーンでは昔から窒素ガスが使われている

 ところで、窒素ガスを充填することは、なぜふつうの空気を入れるよりも良いのでしょうか? そもそも空気だって約80%が窒素なので、窒素100%のガスを入れるメリットがなさそうに感じてしまいます。 

レースシーンではインパクトレンチやジャッキを使うために窒素ガスが用いられている
レースシーンではインパクトレンチやジャッキを使うために窒素ガスが用いられている

 窒素ガスは、製造工程でほとんどの水分が除去されます。ここが大きなポイントです。

 水分が除去されることで、気温が暑くなったり寒くなったり、また走行したことでタイヤが熱くなっても、水分が含まれていないことで、それらの事象に左右されることなく常に一定の圧力が保たれます。

 さらに分子レベルでいうと、空気に含まれる酸素よりも窒素の方が分子の構造が大きいので、結果として空気よりも抜けにくいということが挙げられます。

※ ※ ※

 さて、カー用品店などでタイヤに窒素ガスを充てんするサービスが始まる前から、クルマ好きの間では一部の業界で使われていることが知られていました。それはレース競技です。

 日産のモータースポーツ活動を担うNISMOによると「レースではタイヤを交換する時に使うインパクトレンチや、レースカーを素早くリフトアップするエアジャッキなどに窒素ガスを使っています。高圧で力が必要であることと、安価であることが窒素ガスのメリットです。

 もちろん、タイヤの充てんにも使っています。窒素ガスをタイヤに使い始めたのは、いつ頃かはハッキリしていませんが、エアジャッキがレースで使われ始めたのが1983年あたりからなので、おそらくその年代からだと思います」とのことです。

 では、タイヤへの窒素ガスの充てんは、実際のレースシーンではどんなメリットがあるのでしょうか? 

 実際にワンメイクレースに参戦する人に話を聞いてみたところ「タイヤの空気圧はシビアで、やはりタイムに差が出てくるので、窒素ガスを充てんして使っています。エア抜けしにくいと感じます。また熱ダレに強い、という話は聞きますが、それはそんなに感じたことはありません。でも、空気圧が安定しているというのは間違いないですね」といいます。

※ ※ ※

 いまではカー用品店やタイヤ販売店、ガソリンスタンドなどでも窒素ガスを充てんするサービスが広がっています。実際にカー用品店でどのような案内をしているのか聞いてみました。

「ウチのお店では、タイヤ購入のお客様に無料で充てんしています。窒素ガスだとエア抜けしにくいことや、タイヤが減りにくいといった利点を説明しております。充てん後1年間は、補充無料です。有料での充てんもおこなっており、その場合1本540円で提供しております」(東京23区大手カー用品店ピット担当)

「タイヤを購入していただいたお客様に無料で充てんしています。充てん後は、そのお買い上げいただいたタイヤを装着している限り、補充は無料です。有料での充てんも承っております」(東京23区タイヤメーカー系店舗売り場担当)

 さて、ここまでメリットばかり取り上げましたが、実際に普段クルマを使う上で役に立つのでしょうか。

 先ほど紹介したワンメイクレースに参戦している人に、普段から愛車にも窒素ガスを充てんして使っているのか、聞いたところ「(窒素ガスを)充てんしてくれる所が限られているので、普段はふつうの空気を入れて使っています。それにエアが抜けづらいといっても、ほったらかしというのは信条的にイヤ。なので、普段は1カ月に一度は空気圧をチェックして、入れています」といいます。

 カー用品店でも「窒素ガスを入れるとエア抜けがしにくいからといって、メンテナンスフリーではなく、徐々に抜けていきます。ですので、まったく空気圧を点検しなくても良いということではないと説明しています」とのことです。
 
 窒素ガス充てんのメリットは確かにありそうですが、充てんできる場所が限られてくるのと、タイヤの空気圧を日常的に見る人にとって、メリットはそんなに多くないようです。

その起源は飛行機用タイヤ!? 「タイヤに窒素ガス」の画像を見る(8枚)

画像ギャラリー

1 2

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす

【NEW】自動車カタログでスペック情報を見る!

最新記事

コメント

本コメント欄は、記事に対して個々人の意見や考えを述べたり、ユーザー同士での健全な意見交換を目的としております。マナーや法令・プライバシーに配慮をしコメントするようにお願いいたします。 なお、不適切な内容や表現であると判断した投稿は削除する場合がございます。

3件のコメント

  1. コンパクトレンチではなく、インパクトレンチ

    • ご指摘ありがとうございます。訂正いたしました。

  2. そして期待の重量も数百トン —-> そして機体の重量も数百トン

メーカーからクルマをさがす

国産自動車メーカー

輸入自動車メーカー