市販化は望めない? ジューククローラーや幻のタイプR 3選
クルマには夢があるモデルが度々登場しています。なかには、開発過程でテスト的に製作されたものや、開発スタッフの遊び心、マーケティング主導のものなど、さまざまな理由で生まれたクルマが多くのクルマ好きの心を掴んでいます。今回は、そんな遊び心のある夢のクルマを3台紹介します。
自動車メーカーが考えた夢のクルマとは
自動車メーカーは日々、新しい技術や機能を搭載した未来のクルマの開発をおこなっています。それらが量産化され、市販化に結びつきます。
しかし、度々クルマのイベントでは市販化が難しいと思われる夢が詰まったコンセプトモデルも登場しています。今回は、そんな自動車メーカー自らが企画した夢のクルマを3台紹介します。
●日産「ジューク パーソナライゼーション アドベンチャー コンセプト」
2019年1月に開催された東京オートサロン2019で多くの注目を集めたのが、日産のコンパクトSUV「ジューク」をベースに製作された「ジューク パーソナライゼーション アドベンチャー コンセプト」です。
このコンセプトモデルは、巨大なクローラーとそれをカバーする大型オーバーフェンダーを装着し、どんな悪路でも走破できそうな大迫力のルックスだったことから、お披露目前から話題となっていました。
もともと雪上でのレスキュー用に制作されたモデルだといい、日産のスタッフに話を聞いてみると、「ヨーロッパで雪上テストをした際に、時速100キロでも走れました。ドバイの砂漠でも走行テストしてます」と、実際に各国でのテスト走行も実施済みのようです。
また、ルーフに設置したキャリアは普通は荷物を載せて運ぶものですが、遊び心として、ルーフキャリア上にドローンの発着スペースを設置し、悪路を進む前にドローンで進路の先を偵察をできるようにもなっています。
キャタピラやボディに蛍光の緑をアクセントで取り入れてるのは、雪上で目立つようにしたとのこと。ただこのジュークはかなりリフトアップしているので、普通のタイヤに付け替えることはできないそうです。
なお、このクローラー自体は海外で市販されているもので、ボディサイズとクローラー装着による構造変更手続きさえおこなえば、同様の仕様を作って公道を走行することも不可能ではないそうです。
●トヨタ「RAV4 ロングモデル」
トヨタは、2019年4月にSUVモデル「RAV4」を約3年ぶりに復活させました。販売低迷などもあり一度は国内市場から撤退しましたが、復活した新型RAV4はもっとも売れているSUVモデルとして人気を得ています。
そんなRAV4に市販車とは異なる全長を伸ばしたモデルが存在します。世界で1台しかないRAV4ロングは、なぜ誕生したのでしょうか。ロングの担当者は次のように説明しています。
「RAV4を生産している高岡工場の製造やプレスなど、200人から300人のメンバーが就業時間外に集まって約半年掛けて自分たちで作ったモデルです。いろいろと細かな部分にもこだわっています。
作るきっかけとしては、RAV4というクルマを製造側も盛り上げようという想いがあって作りました。とくに市販化などは考えていませんが、盛り上がりの一環になればと思います」
市販されているRAV4のボディサイズ(一部グレードを除く)は、全長4600mm×全幅1855mm×全高2690mmです。ロングモデルは、全長を800mm延長しており、その伸ばした分の天井、側面、床面のボディ部分など細部にわたって作り込まれていました。
後部座席に座るとまさにリムジンのような余裕のある室内空間が広がっています。開発者の遊び心としてボンネットや車内には装飾が施され、ボディサイドのキャラクターラインは市販車ではできないほどのエッジが効いており、手作業で叩き上げて仕上げたそうです。
また、ボディカラーは日本では設定されていないものの、海外の一部地域で採用しているオレンジ系のものを採用しているといいます。
●ホンダ「シビック タイプR MUGEN RC20GT Package Pre Production MODEL」
ホンダ「シビック タイプR」をベースとしたこのモデルは、東京オートサロン2018に出展したコンセプトモデル「MUGEN RC20GT TYPE R CONCEPT」を熟成し、市販化に向けて走行性能・デザインを磨き上げたプレプロダクションモデルです。
モデルの概要について、出店当時に株式会社M-TEC(無限)の野田和宏氏は次のように話していました。
「今回のモデルは、公道走行も可能で、サーキットアタック専用ではなく完全なロードカーになっています
特徴はCFD(数値流体力学)解析によって、空気抵抗を増やすことなくダウンフォースをノーマルの3倍にするカーボン製エアロパーツや、オールチタン製エキゾーストシステムを装着しています。これによって約43kgの軽量化も実現しています。
また、専用のサスペンションに、ブレンボ製6ポッドキャリパーなども装備していますが、エンジンはバランス取り程度で、ほぼノーマルのままです」
実際に東京オートサロン2019の時点では、同年の夏に受注開始を予定していました。しかし、その後7月4日に無限は、「『MUGEN RC20GT Package』を販売する事が現実的ではないとの判断に至り、発売を中止する事と致しました」とアナウンス。
これによって、幻のタイプRとなってしまったのです。
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今回、紹介した夢の詰まったモデル達は、実際に市販車の開発過程でテスト的に製作されたものや、開発者達の遊び心などさまざまなきっかけで誕生しています。
タイプRのように販売前提で製作したものの、中止してしまったものもありますが、多くのクルマ好きは夢のあるクルマをいつまでも心待ちにしているものです。
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