日産が高級車「シーマ」も年内販売終了へ スカイラインに販売を集約か
かつて日産の国内市場において「シーマ」ブランドは絶大な人気を誇り、「シーマ現象」という言葉も誕生しました。しかし、最近では販売低迷が続き、「キューブ」「ティアナ」に続き2019年内で販売終了するといいます。かつて人気モデルだったシーマに何が起こったのでしょうか。
日産の高級車をけん引した「シーマ」が生産終了
最近は、トヨタ「マークX」、「エスティマ」、三菱「パジェロ」などかつて人気の高かったクルマが販売を終えたり、2019年内の終了を発表しています。
また、日産では「キューブ」や「ティアナ」の販売終了がアナウンスされているなかで、新たに「シーマ」も販売を終える模様です。日産の国内市場における高級車をけん引してきたシーマはなぜ販売終了となるのでしょうか。
日産の販売店では「今ではシーマとフーガが注文を入れられなくなりました。フーガは上級セダンの主力車種なので、販売の終了は考えにくいです。今後改良をおこなって復活すると思いますが、シーマはおそらくこれで終わりでしょう」といいます。
シーマを終了する理由を尋ねると「先ごろスカイラインが大幅なマイナーチェンジをおこない、2リッター直列4気筒ターボエンジンを3リッターV型6気筒ツインターボに強化しました。
400Rという高性能なグレードも加わり、ラインナップを刷新しています。今はフルサイズセダンの人気が低迷しているので、魅力のある個性的なモデルに特化する方針なのでしょう」とコメントしました。いわゆる選択と集中です。
確かに今はシーマの売れ行きが下がりました。2019年の登録台数は、もっとも多い3月でも27台で、ほかの月は10台から20台です。トヨタの最高級モデル「センチュリー」は月に30台から40台は登録されているので、シーマは少ないです。
現行シーマの発売開始は2012年で、この時点でも販売目標は1年間に1000台(1か月当たり83台)だったことから、たくさん売ることを考えたクルマではありません。
フロントマスクは上級化されたものの、基本的にはフーガハイブリッドのロング版です。海外のインフィニティで扱うことを目的に開発されました。
こうなると1か月の売れ行きが10台から20台でも仕方ないように思えますが、シーマという車名を考えると寂しさも感じます。
初代シーマは1988年1月に発売され、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)の数値も含めて、前年に登場した「セドリック/グロリア(Y31型)」がベースでした。それでもシーマは独自の3ナンバー専用ボディを採用して、注目を集めました。
初代シーマのエンジンは3リッターV型6気筒DOHCと同じターボエンジンで、後者の最高出力は、当時の乗用車では最強の255馬力です。
このエンジンは「レパード」のマイナーチェンジで搭載することを目的に開発を進めていましたが、シーマが「横取り」した経緯があります。
レパードも1988年8月の改良で搭載しましたが、レパードの開発者にとって「シーマのエンジンを積んだ」といわれるのは不満だったといいます。
このような裏話もあるほど、初代シーマは好景気の波に乗って好調に売れました。発売時点では1か月に3000台の目標台数が発表され、これはほぼ達成されて「シーマ現象」という言葉まで生まれました。
ところがその後は、1989年に発売されたトヨタ「セルシオ」との販売競争で苦戦を強いられ、売れ行きを下げていきました。
それでも4代目シーマが2010年に一度販売を終えた後、現行型が2012年に復活した際は、シーマの発展に期待を持ちましたが、これもどうやら甘い考えだったようです。
今後の日産の国内モデルはどのようなラインナップになっていくのでしょうか。
前述のとおり、キューブとティアナの販売終了が決まっているうえ、「ジューク」と「シルフィ」は、海外では新型モデルが発表されたのに、日本国内で売られているのは旧型です。
「エルグランド」は販売が低調で、「エクストレイル」も下降傾向にあります。その結果、売れ筋の「ノート」+「セレナ」+「デイズ」+「デイズルークス」の販売台数を合計すると、国内で売られる日産車の65%から67%に達します。
2020年3月までには、次期型のデイズルークスが発売されるといいます。さらに東京モーターショー2019に出展された電気自動車のSUVとなる「アリアコンセプト」、軽自動車サイズの電気自動車とされる「IMk」も、市販を前提にしています。
時代の流れを考えれば、電気自動車も重要ですが、エンジンを搭載したクルマの需要も根強いです。シーマに代わるような、憧れになり得る高級車にも登場して欲しいです。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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