ホンダが軽トラ市場から撤退! それでも「無敵車」軽トラに需要があり続ける理由とは

やっぱり特殊なクルマ? 「スーパーキャリイ」に乗って感じたこととは

 ホンダの撤退により、軽トラック市場はスズキとダイハツの2強体制が明確になります。モデル別でみると、スズキには「キャリイ」というベストセラー軽トラックがあります。1961年に発売された初代を含め、初期のモデルは「スズライトキャリイ」という車名で販売されていました。

 軽トラック市場で「キャリイ」のシェアは直近5年では約30%から約35%で推移。駆動方式では2WDが約30%、4WDが約70%。購入者の業種別構成比では、農林水産業と総合建設業が約50%を占めています。

スズキ「スーパーキャリイ」
スズキ「スーパーキャリイ」

 そうしたなか、派生車種の「スーパーキャリイ」は2018年に発売されました。コンセプトは「ゆったりキャビン」です。ヘッドレスト一体式シートの後方に、奥行250mm×幅1235mm×高さ920mmのスペースがあり、衣服、食品、書類などを置くことができます。

 このシートバックスペースがあることで、運転席のシートは前後180mmもスライドでき、ドライバーにとっては軽乗用車に乗っているような開放感があります。ボディ寸法は、全長3395mm×全幅1475mm×全高1885mmで、キャリイと比べてハイルーフ化されています。
 
 では、走りはどうでしょうか? 今回は空荷での走行としクルマ本来の特性を感じてみました。

 軽トラックは車両重量が軽いのにも関わらず、最大350kgを積載しても操縦安定性と乗り心地を維持する必要があるため、空荷の状態では軽乗用車とは異質の感じを持つものが多いです。

 そのうえで、「スーパーキャリイ」の乗り心地は、筆者の想定よりはヒョコヒョコしておらず、路面からの突き上げも強過ぎるとか、とげがあるような唐突さはありません。

 エンジンについてですが、想定以上にトルクがあって使いやすいという印象です。試乗車は2WDの5速MT。空荷では2速発進が楽にでき、常用走行域である時速40kmから50kmでは4速をホールドし、交差点で減速して曲がる際は3速で十分です。

 ハンドリングは、操舵角度がある程度深くなると、スゥーッと内側へ自然に回り込むような感覚です。MTの軽トラックを運転している人の多くは、左手がシフトノブに触れている時間が長く、右手だけでハンドルを切っている印象がありますが、このハンドリングのセッティングだと、まさにそうしたドライビングスタイルにぴったりだと思えます。

 正直なところ、このドライビングスタイルでは、走行中の疲れが少ないように感じました。もちろん、ハンドルはできるだけ両手でしっかり握るべきなのですが、農地や建設現場といった特殊な道路においての現実的なドライビングスタイルを尊重することも必要かと思います。

 また、軽乗用車と同じく「サポカー」対応として、ステレオカメラ式の高度運転支援システムも装備しています。

 こうした「スーパーキャリイ」、さらに「キャリイ」を開発するうえで、どのような努力や苦悩があり、軽トラックは今後どのように進化していくのでしょうか。筆者は、東京モーターショー2019でスズキの開発者にインタビューして、詳しい話を聞きたいと思います。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。
近著に「クルマをディーラーで買わなくなる日」(洋泉社)。

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