トヨタ「プレミオ」も廃止か!? 約20年の間に日本のセダン市場に何が起きたのか
ミニバン時代に開発された「プレミオ/アリオン」 果たして人気は?
小型セダンの衰退の背景には、当時のミニバン人気の影響もありました。1992年には3ナンバーサイズのみだったトヨタ「エスティマ」に、5ナンバーサイズの「エスティマルシーダ/エスティマエミーナ」が加わって売れ行きを急増させています。
1993年の登録台数は、エスティマシリーズを合計すると1か月平均で9000台ですから、いまの「アルファード/ヴェルファイア」と同等でした。1994年にはホンダ初代「オデッセイ」も発売されて、人気車になっています。
その一方でスモールSUV人気もあり、1995年にはトヨタから初代「RAV4」が発売され、若年層を中心に人気を高めました。
短期間ではありましたが、ステーションワゴンもブームになっています。トヨタ初代「カルディナ」は1992年に発売されながら、1995年3月に1万4000台近くを登録して、対前年比を165%まで急増させました。発売から3年を経過したクルマが、前年の1.6倍も売れたのですから、ワゴンブームとはいえ驚きました。
このように1990年代に入ると、バブル経済の崩壊で国内販売総数が急降下する一方、ミニバン/SUV/ステーションワゴンという具合に複数のカテゴリーが成長を開始します。
手頃な価格のクルマを求める人たちの大多数は、それまではセダンを中心に選んでいたのですが、選択肢が増えてしまったのです。
それまでは好景気の中でセダンを大量に生産して、効率良く商売をすることができましたが、1990年代の中盤以降には多品種少量生産の時代が始まりました。
しかもトヨタ自身、この時点で1996年に発売する「イプサム」や「タウンエースノア/ライトエースノア」といったミニバンの開発をおこなっていました。
エスティマルシーダ/エスティマエミーナや、オデッセイのヒットを見れば、イプサムやタウンエースノア/ライトエースノアが人気を高めることは確実で、小型ファミリーセダンのコロナは打撃を受けます。そういった背景もあり、商品力を高めて車名もコロナプレミオ、そしてプレミオへ変えることにしたのです。
2代目の現行プレミオ/アリオンも、2001年に発売された初代プレミオの延長線上にありますが、発売が2007年なのでいまではさすがに設計が古くなりました。各メーカーともにセダンの衰退を以前から把握していたにも関わらず、需要を維持できる有効な手段を講じられなかったのは、結果論ではありますが残念に思います。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。
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