クルマは道路が冠水しても走行できる? 浸水で停止する限界はどれくらいなのか
近年頻発している異常気象の影響で、長雨や集中豪雨などで道路や街が冠水する事態が増えています。もし運転中に突然の豪雨などに遭遇した場合、どの程度の冠水までなら、運転できるのでしょうか。
突然やってくる冠水の恐怖、クルマが壊れる原因とは?
数年前から突如増え始めた印象のある、集中豪雨による冠水被害。クルマはもちろんのこと、家屋まで飲み込む異常気象による集中豪雨は、いつ発生するか分かりません。また、遠出したときに起きる可能性もあり、土地勘のない場所で冠水した道路を走行するか、それとも走るのかをやめるのか判断が難しいところです。
どの程度の冠水であれば、クルマで走行することができるのでしょうか。
そもそも、クルマは気密性があまり高くない乗り物です。ある程度の冠水・浸水を想定して設計されてはいますが、車内にあるエアコンの吹き出し口はもちろん、ドアとボディには隙間があり、いつ車内が浸水しても仕方がないというのが現状です。
1番の問題はマフラーから水が侵入してくると、エンジンがストップする恐れがあることです。
エンジンはガソリンと空気を混合させた気体を燃焼させてピストンを動かし駆動力を得ていますが、浸水すると水を圧縮できずにピストンとクランクシャフトをつなぐ「コンロッド」というパーツが曲がり、エンジンを破壊してしまう可能性すらあります。この現象を「ウォーターハンマー」といいます。
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では、実際に、どの程度の冠水した道なら走ることができるのでしょうか。JAF(日本自動車連盟)東京支部の高木さんは、次のように説明します。
「目安としては、クルマの床面が浸からない程度までが走行できるボーダーラインと認識していただければと思います。しかし、冠水した道路は見た目だけでは深さが判断しづらく、アンダーパスや高低差のある道路などは侵入を控えたほうがいいでしょう。
また、ギリギリ走行できるレベルの水深でも十分に速度を落とすことが大切です。早く抜けたい気持ちは理解できますが、巻き上げた水が吸気口に入りエンジンがストップしてしまう危険性もあります。
対向車や歩行者に水をかけてしまう可能性も高いので、悪天候のときこそ周囲に配慮した運転が大切です」
ちなみに、JAFでは2010年に「冠水路走行テスト」として、セダンタイプとSUVタイプがどの程度の冠水路を走行できるかの実験結果を公式ウェブサイトで公開しています。これはアンダーパスがある道路が冠水したことを想定したテストになっています。
テスト結果では、セダンタイプとSUVタイプは「水深30cm」の冠水路を時速10km、時速30kmで走行できましたが、「水深60cm」になるとセダンは時速10kmでも走行できず、SUVは時速10kmでは走行できましたが、時速30kmでは走行できないという結果となりました。
上記のテスト結果やJAFのコメントから判断すると、15cmから20cmぐらいが安全に走行できるボーダーラインとなりそうです。ちなみに道路の縁石の高さが約15cmなので、縁石が見えない道路はアウトと判断して方が良さそうです。
最近のクルマはアイドリングストップ機能があるので、誤って水深の深い所に入ってしまいビックリして停車した途端にエンジンが止まり、マフラーから排気管に侵入した水が抵抗になって再始動出来ず脱出が叶わなくなる可能性があると思います。
こういう危険がある時は運転しないのが一番ですが、どうしても運転する必要があるなら機能を一時的に切る事をオススメします。