「DS3クロスバック」は唯一無二のプレミアム感 コンパクトSUV市場に旋風を巻き起こすか
内外装の印象とマッチした、しっとりとした走り
スタートボタンを押してエンジンを始動、シフトセレクターをDにして出発します。
新型1.2リッター直列3気筒(直3)ターボエンジンは、しっとりと速度を上げていくジェントルな印象です。ほかのプジョー/シトロエンモデルに採用される1.2リッター直3ターボエンジンは、低速域でのトルク感が薄めで、結果としてエンジン回転を上げてしまいがちになるのですが、DS3クロスバックのエンジンは、そのあたりが解消されています。
130馬力/230Nmですが、不足感を覚えることはありません。8速ATもなめらかに変速していきます。任意でスポーツ/ノーマル/エコの3モードに選択でき、エンジンレスポンスやシフトスケジュールなどを統合制御しますが、3モードそれぞれにきちんとした差があり、選ぶ楽しみが味わえます。
パドルシフトも標準装備されています。8速と多段化されているため、ひとつシフトダウンしてもエンジンブレーキがかかりづらいのは最近の高級車の常であり、このDS3クロスバックも同様です。
高速走行では、非常に静かな室内を保ちます。遮音に優れていて、速度を上げていってもエンジンノイズは室内に届いてきません。この静けさはプレミアムな走りを際立たせます。
シートの座り心地も抜群で、身体にゆったりとフィットしながらコーナリング時のホールド性も確保するという、なんとも不思議なテイストを実現しています。
DS3クロスバックの走りで、特筆すべき点は「ハンドルを切ったら切ったぶんだけ曲がる」というところです。これは当たり前のことのように思えますが、とくにこのクラスのSUVにはない良さといえます。
これは、プジョー/シトロエンなど「グループPSA」で初採用となる新世代プラットフォーム「CMP」の採用が大きいと思われます。従来のプラットフォーム「PF1」比で約30kgの軽量化を実現しながら、剛性は約30%向上、さらにクリップによるパーツ固定のかわりにビス止めの比率を10%アップさせ、ノイズの軽減も実現しているそうです。
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BセグメントのSUVといえば、日本車でいえばトヨタ「C-HR」やホンダ「ヴェゼル」、マツダ「CX−3」、輸入車ではルノー「キャプチャー」やシトロエン「C3エアクロスSUV」プジョー「2008」など、日本だけでなく世界的にもライバルがひしめく激戦区になっています。
そんななか、今回試乗したDS3クロスバック「グランシック」は、411万5000円という車両価格です。最上級グレードとはいえ、BセグメントSUVで400万円台は「高い」と感じてもおかしくありません。
ですが、実際に試乗してみると、外観、室内、走り、どれを取ってみてもすべてが作り込まれていて、すべてが質感高く仕上がっています。
コンパクトモデルというのは、一般的にはどんなに豪華なオプションを装着しても走りがガサツだったりと、どう頑張ってもネガティブな部分が目についてしまうのですが、DS3クロスバックに限っていえば、そうしたネガはいっさい感じることがありません。
プレミアムという言葉は一見、「コンパクト」と相反するもののように感じますが、DS3クロスバックに乗ると、まさに「プレミアム・コンパクトSUV」という呼び名にふさわしく思えてきます。ほかに似たクルマがない外観も、きらびやかななかにも落ち着いた印象がある内装も、オシャレなフランスのモデルらしいアバンギャルド(前衛的)なプレミアム感に包まれています。
DS3クロスバックは、ほかの人とは違った、豊かなカーライフを送りたいという人におすすめなモデルです。
ウィンググリルもようやく板についてきたと思わされる反面、どこか中国好みの脂ぎった面処理がボディ随所に見られるのは惜しまれる。
もちろん同じDSオートモビルの新作=DS9セダンよりも遥かに覇気がある造形なため免じて許しておこう。