なぜホンダ車は海外の「おさがり」ばかり? 軽は絶好調も普通車苦戦の販売事情とは
ホンダが国内市場で復活する方法とは
ラインナップしている車種の廃止は、ユーザーと販売会社の両方にとって不利益になります。
したがって車種を廃止するときは、販売会社の意見も聞いて、慎重に対処する必要があります。廃止して海外専用車にするなら、二度と日本には戻れない覚悟を持つべきです。CR-Vとシビックについては、ご都合主義の場当たり的な対応といわれても仕方ありません。
そして日本のフルモデルチェンジを遅らせたり、生産を終えた車種を数年後に再開する対応を繰り返すと、日本国内と海外の販売格差がさらに進行します。
いまのホンダの販売状況を見ると、世界生産台数の内、海外の販売比率が85%に達します。国内比率は15%です。
しかもN-BOXが国内の最多販売車種になっている事情もあり、国内で売られるホンダ車の50%を軽自動車が占めます。新型N-WGNが好調なことから、今後は軽自動車比率がさらに高まるかも知れません。
そうなると国内で売られるホンダ車は、軽自動車と少数の小型/普通車に任せておけば良いという話にもなるでしょう。
実際、2019年上半期(1月から6月)において、「軽自動車+フィット+フリード+ステップワゴン+ヴェゼル」の販売台数を合計すると、国内で売られるホンダ車の88%に達します。
復活したCR-V、伝統あるオデッセイなどは売れ行きが伸び悩み、5ナンバー車でも「グレイス」や「シャトル」は売れていません。

これは全店が全車を併売するようになった弊害でもありますが(全店が全車を扱うと、売れ筋車種が販売しやすい低価格の実用指向に著しく偏ります)、車種を大幅に削減する予兆とも受け取られ、「CR-Vもアコードも、結局は売れなかった」という話になり、国内で廃止すると、CR-Vなどは二度と復活は望めません。
「国内市場が縮小傾向なのだから仕方ない」ともいえますが、もう少し頑張ってみたらどうでしょうか。
たとえば、シビックは、現行N-BOXのフルモデルチェンジ、フィット/シャトル/ステップワゴンのマイナーチェンジが重なった時期に発売されました。この時期に販売現場が多忙になるのは当然で、シビックが埋もれることは十分に予想されました。
その割にシビックは堅調に売れたので良かったですが、時期をずらして復活をさらに盛り上げる手もあったと思います。
シビックは、クルマ好きの多い中高年齢層にとって思い出深い車種ですから、新型車の少ない時期に販売店やウェブサイトで趣向を凝らしたイベントをおこなえば、復活は一層歓迎されたでしょう。
そうなればシビックを目当てに販売店を訪れたユーザーが、後席の居住性に不満を感じて、アコードを買うこともあるのです。新型車を盛り上げると、ユーザー、販売会社、顧客と業界全体にとって優れた相乗効果が期待されます。
したがって、たとえ好調に売れる見込みの乏しい海外向けの高価格車でも、発売するなら時期を選び、販売現場を盛り上げる相乗効果を考えるべきです。アコードを北米デビューから2年半も経過して日本に導入したのでは、このような効果は見込めません。
また、クルマ好きにとって何よりも辛いのは、メーカーが自社商品とそのユーザーを粗末に扱っていると感じることです。自社商品とユーザーに愛情が注がれていれば、メーカーの都合で発売時期を遅らせたり、2車種も廃止と復活をさせることはないと思います。
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。


















































