スバルのカスタム部門 STIが目指したのは「思い通りに動くクルマ」 その性能を実車で体感した!

2019年9月13日。自動車メーカー直系のチューニングブランド4社が開催するイベント「ワークスチューニング合同試乗会」がおこなわれました。TRD、NISMO、無限、STI、それぞれのメーカーが持ち込んだ自慢の最新カスタマイズカーを試してみました。

 自動車メーカー直系の4大ブランドが開催する「ワークスチューニング合同試乗会」が、今年もツインリンクもてぎの北コースをベースとして開催されました。

 話題の新型車から人気モデルのさらなるブラッシュアップまで、各社がモータースポーツと生産車造りを通して得たノウハウを存分に注入した、ワークスならではのチューンドカーたちに試乗することができました。

 今回はSTIがチューニングを施した「インプレッサスポーツ」「フォレスター」の試乗をメインにお届けします。

STIによってチューニングされたインプレッサスポーツとフォレスター
STIによってチューニングされたインプレッサスポーツとフォレスター

STIは、”体幹を鍛えればクルマは思い通りに動くようになる”がコンセプト

 人間と同様に「体幹を鍛えればクルマは思い通りに動くようになる」。そのコンセプトを示すモデルとしてSTIは、インプレッサスポーツ2.0iーSとフォレスターX-BREAKの2台を持ち込んでいました。フォレスターはSTIパフォーマンスパーツを装着した仕様。その比較対象として、ノーマル車両にも試乗しました。

 今回はこのフォレスターを周遊道路だけでなく、クローズドコースでも走らせました。そして普段フォレスターではなかなか体験し得ない高い荷重領域でこれを運転すると、シンメトリカルAWDの恩恵を一般道よりも強く感じ取ることができます。

 具体的にはフロントオーバーハング重量を低減し、低重心化に貢献する水平対向ユニットの恩恵がはっきりと分かります。ターンインではその巨体をもてあますことなくノーズをコーナーのイン側へ向け、きれいにコーナリングをしてくれます。

 やや曲がりたがりな性格ですが、長いホイールベースと4WDの駆動力がこれを穏やかに抑えてくれるため、安心してカーブを曲がることができるのです。しかしSTIパフォーマンスパーツを装着したフォレスターは、その一枚上手をいくハンドリングを持っていました。

 まずターンインではステアリングの切り始めから応答性が高いため、手の平にタイヤのグリップを感じながら運転することができます。ノーマル車両はこの部分がやや弱く、車体の姿勢や慣性といった、外からの情報に多く依存して挙動を判断しているとわかりました。

 よってSTIパーツ装着車両は、よりクルマとの一体感を持って運転することができます。そしてこれは一般道では、ほどよいダイレクト感となってハンドリングに現れていました。

 さらに素晴らしかったのは、STIパフォーマンスパッケージのインプレッサでした。

 その重心がフォレスターよりも圧倒的に低いこともありますが、インプレッサの走りはちょっと芸術的。ステアリングには遊びがほとんどなく、しかし行き過ぎたクイックさもないために、安心して走ることができます。
 
 姿勢も安定しており、コーナリングスピードも速い。しかしここに楽しさが感じられるのは、内輪の接地性が高くロールが抑えられているからでした。かなり高い旋回速度でコーナリングしても4輪の接地性が高いためにスキール音さえでない。車輌安定制御も介入しないミズスマシのような走りをしてくれたのです。

 こうしたフォレスターとインプレッサの走りを支えているのは、フレキシブルタワーバーとフレキシブルドロースティフナーと呼ばれるパーツです。
 
 タワーバーはご存じの通りストラットマウントをつなげて車体剛性を向上するパーツ。スティフナーは車体とクロスメンバーをつなぐ、やはり剛性パーツです。

 しかし“フレキシブル”という名前が示す通り、これらのパーツは剛体ではありません。タワーバーはその中央にボールジョイントを仕込んでおり、ドロースティフナーにはスプリングが入っています。これによって連結された部分にはあらかじめテンションが掛かっています。また押し・引き方向では剛性を高めますが、それ以外の入力はいなしてくれるのです。そしてこの引っ張る方向で剛性を出す方法が内輪接地を高めていたのでした。

 ただし必要な部分は、しっかりと剛性を上げる。それがフォレスターのサブフレームに装着された「サポートフロントキット」でした。
 
 フォレスターやインプレッサは新世代プラットフォームを得て、そのボディ剛性を向上しました。しかしエンジンや駆動系は変わっていない。そしてこれを支えるサブフレームも、長らく同じなのです。ここで操舵時における初期応答性の曖昧さを改善するために、STIはサブフレーム剛性を高めようとしたのでした。

 コーナリングパフォーマンスを向上する方法は、いくつもあります。チューニングとしてもっともユーザーがわかりやすいのは、ゲインを上げること。タイヤが持つグリップを素早く立ち上げることで、ハンドリングがキビキビと感じられるからです。
 
 しかしSTIはゲインに頼ることなく、操作したときの応答性を良くする方法を選びました。だからスバル車が持つ資質、その体幹バランスの良さを、操作で感じ取ることができるのだと思います。

フランスから帰ったばかりのWRX STIのレース車両がかっこよすぎる!(画像42枚)

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Writer: 山田弘樹(モータージャーナリスト)

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。レース活動の経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆中。並行してスーパーGTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師も行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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