マツダ初の量産EV2020年投入へ 試作車試乗で見えたマツダの方向性

「マツダ車最良」の動的質感!? 2019年秋公開の新型EVの姿とは

 ハンドリングに関しては、マツダの新世代商品に通じるブレのない走りに安心する一方、新たな驚きもありました。

マツダの「電動技術検証車両(e-TPV [Technology Prove-out Vehicle] )」
マツダの「電動技術検証車両(e-TPV [Technology Prove-out Vehicle] )」

 一般的に多くのEVは低重心/前後バランスの最適化で落ち着きある走りを実現するモデルが多いのですが、e-TPVはそれに加えて重いバッテリーを搭載していることを忘れてしまうような「身のこなしの軽さ」と「クロスオーバーを感じさせない路面に吸い付くような一体感」、「路面を選ばずフラット感と質の高い乗り心地」が備わっていました。

 これは多方向環状構造ボディや伝達経路の高剛性化による応答遅れの低減や力の伝達のコントロール、モーターによるGベクタリンクコントロール作動領域の拡大が効いているそうです。

 例えるなら、「見た目はCX-30、走りは高級プレミアムセダン」といったイメージで、動的質感の高さは技術検証車ながら「マツダ車最良」の仕上がりといっても過言ではありません。

 マツダ3にはガソリン、ディーゼル、スカイアクティブXとパワートレインが豊富にラインアップされていますが、「車両全体のバランス」という意味では、残念ながらどれも決定打に欠けるのも事実です。

 しかし、e-TPVに乗って感じたのは、マツダが目指す走りの理想である、クルマに乗っている状態が「自然で違和感がない」、走る/曲がる/止まるの「究極の滑らかさ」がもっとも体現できているクルマだと感じました。

 このように単なる電動化に留まらない所は、「じつにマツダらしいな」と感じた一方で、内燃機関モデルは今後どう進化させるべきか考えさせられました。

 筆者は、ガソリン、ディーゼル、スカイアクティブXがEVのような滑らかな特性を目指すのではなく、むしろ各々の“個性”を活かす方向に進化させていくべきだと思います。

 どれも同じで単なる燃料違いだけなら、あえて複数のパワートレインを揃える必要はないかなと考えました。

 このパワートレイン/プラットフォームを採用した量産モデルは2019年10月におこなわれる東京モーターショー2019で世界初公開され、2020年に市場導入される予定です。

 そのモデルは「既存のモデルではなく新型車」という以外、今回はノーアナウンスでしたが、マツダ関係者は満面の笑みで「ご期待ください」とのこと。この走りにふさわしいデザインはセダン、ハッチバック、それともクーペでしょうか。

 2020年に、マツダは創立100周年を迎えますが、その門出にふさわしいクルマに仕上がっていることを期待しています。

次世代マツダ車を示唆する!? 「e-TPV」を写真で見る(24枚)

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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