マツダ初の量産EV2020年投入へ 試作車試乗で見えたマツダの方向性
マツダらしいEV!? 試乗で明らかになった乗り味は
e-TPVのスペックは、モーター出力が105kW(約141馬力)/265Nm、駆動用バッテリーが35.5kWhと、すでに世に出ているEVと比べると控えめに感じるかもしれません。
航続距離は未公表ですが、スペックから推測すると恐らく200km前後といった感じではないでしょうか。ただ、これにもしっかりと理由があります。
ひとつは、マツダの考える電動化の特徴は「マルチソリューション」。つまりEVにすべてを託すのではなく、距離を求めるなら内燃機関と組み合わせてレンジエクステンダー/プラグインハイブリッド/シリーズハイブリッドと、適材適所で応用させるパワートレインという考え方です。つまり、地域の特性に応じてさまざまな引出しを用意しているのです。
もうひとつは「地球環境負荷の低減」になります。闇雲に大容量バッテリーを搭載するのではなく、Well to Wheelに加えて資源採掘から廃棄までクルマのライフサイクル全体でのCO2低減を目指す「LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)」の観点から、適切な容量のバッテリーを搭載することで、本質的な地球環境負荷低減も考えているのです。
ちなみに組み合わせる内燃機関は、あの「ロータリーエンジン」です。2012年に「RX-8」が生産終了して以降、ロータリーエンジンの歴史は途切れていましたが、電動化に合わせて、当時とは違う形ではあるものの、復活を遂げます。
小型で軽量/高いレイアウト性に加え、動弁系無し/シンプルな塊構造/滑らかな燃焼/フルバランスといったロータリーエンジンのメリットが、マツダの電動化技術をサポートします。
今回は技術展示のみでしたが、こちらと組み合わせたモデルも非常に楽しみです。
マルチソリューションにより、「EV=航続距離」という呪縛から逃れたことで手に入れたメリットは多々あります。
モーター/インバーター/DCDCコンバーター/ジャンクションBOXの一体化に伴うユニットの小型化により、ボンネットを開けるとスペースはスカスカ。
床下に薄く配置されたバッテリーパックも、CX-30のホイールベース(2655mm)内にしっかりと収められているので、居住性に関しても内燃機関モデルとほぼ同じと考えて良いと思います。
昨今、EVはバッテリー容量に合わせてボディサイズが決まってしまい、本来EVを使いたい人のための物になっているかというと疑問がありましたが、マツダの考え方は適切な車両パッケージングに貢献するはずです。
プラットフォームは他社のような専用品ではなく、マツダ3から採用された多方向環状構造ボディを用いた次世代プラットフォーム「スカイアクティブビークルアーキテクチャ」です。
じつは、スカイアクティブビークルアーキテクチャは企画当初から電動化を視野に入れた設計で、変更は最小限だといいます。むしろバッテリーパックと車体を強固に結合(多方向環状構造ボディの進化)することで、車体剛性はさらに進化しているそうです。
では、実際に乗るとどうでしょうか。運転席に座りシートポジションを合わせてスタートします。筆者はこれまでさまざまなEVに乗っていますが、第一印象は「ほかのEVとは違う」でした。
もちろん動力減となるモーターは内燃機関と違い「応答遅れ」はほぼゼロ、アクセルを踏んだと同時に加速が始まる、という意味では同じです。
しかし、ほかのピュアEVのように「内燃機関とは違うでしょ」というようなモリモリ湧き出る力強さではなく、あくまでもドライバーのペダル操作に合わせて必要なだけ力強さが増していく自然なフィーリングです。
言葉として正しいかわかりませんが、EVというよりも「静か」で「シームレス」で「超滑らか」な内燃機関、と表現したほうが良いかもしれません。
e-TPVに乗って「これくらいのサイズのクルマであれば、こんな加速をしてくれるよね」というような、動力性能に対する期待値と実際のパフォーマンスはリンクしており、絶対的な動力性能に関しても十分以上だと思いました。
一般的にEVは無音といわれますが、実際は電車と同じくインバーター音が聞こえます。しかし、e-TPVは「トルクの向き」と「大きさ」をドライバーに感じさせるために独自のサウンドがプラスされています。
そのサウンドを言葉で例えるのは難しいですが、強いていえばEVと内燃機関がミックスしたようなイメージでしょうか。乗っていて違和感はまったくありませんでしたが、個人的には無理に内燃機関に似せる必要はないと感じたのも事実です。
ただ、このサウンドをプラスしたことで、ロードノイズ(ノルウェーの舗装路は条件がとくに厳しい)をはじめとする走行音が逆に緩和される効果があり、結果的に静粛性にも大きく寄与していることが体感できました。
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