トヨタ「エスティマ」10月生産終了で約30年の歴史に幕! ミニバン人気のなか定番車種が廃止される理由

全店で全車を販売することにともない車種のリストラがおこなわれる

 今回のエスティマの廃止は、車種のリストラの一環です。トヨタの国内販売店は、2020年5月に全店で全車を売るようになります。

 東京地区ではすでに全店で全車を販売する体制に移行していますが、全国規模で実施されれば、販売系列ごとに車種を区分する必要はありません。

トヨタ「エスティマ」(2016年6月マイナーチェンジ)
トヨタ「エスティマ」(2016年6月マイナーチェンジ)

 アルヴェルや「ヴォクシー/ノア/エスクァイア」といった姉妹車は、意味をなさなくなります。

 姉妹車が削減され、さらに「マークX」(発売は2009年)、「プレミオ/アリオン」(同2007年)も順次廃止されます。マークXは、2019年12月をもって生産終了ということが、すでにアナウンスされています。

 これからのトヨタは、国内の取り扱い車種と販売網をスリムにして、カーシェアリングなどの新しいビジネスを充実させるのです。

 フルモデルチェンジをおこなうのか、あるいは現行型で終了するのか、基本的な見分け方は発売されてからの経過年数です。

 商用車やオフロードSUV以外は、10年を経過すると基本設計の古さが目立ってきます。安全装備などの刷新はマイナーチェンジでは難しくなり、ユーザーが飽きて離れる場合もあります。

 そのため、一般の乗用車で10年以上を経た車種は、もはや大きな変更を受けず、徐々に売れ行きを下げて生産を終えることが多いです。

 トヨタの場合、2010年に現行型を発売した「ヴィッツ」が限界ギリギリでしょう。ヴィッツは、2020年にフルモデルチェンジを実施する予定とされています。

 初代エスティマは、1990年に卵型のボディで登場して、直列4気筒2.4リッターエンジンを搭載しながら、価格は約300万円でした。ミニバンというより、新しい高級車の姿を提案しました。

 この後、エスティマが定着し始めた時期を見計らって、5ナンバーサイズの「エスティマ ルシーダ&エミーナ」を発売しました。リアサスペンションがシンプルな車軸式のグレードは、価格が3ナンバーサイズのエスティマに比べて約100万円も安価でした。

 この市場戦略は見事に当たり、エスティマは人気を高めてミニバンの定番車種になりました。2000年には2代目にフルモデルチェンジされ、ボディを1種類に統合する一方で、ハイブリッドを加えています。現行型は3代目です。

 2016年のマイナーチェンジでは、衝突被害軽減ブレーキも採用されて積極的に売る意欲を見せましたが、歩行者対応は最後までおこなわれませんでした。

 2019年上半期のエスティマの登録台数は、1か月平均で791台です。アルヴェルの合計台数に比べると1割にも達していませんが、いまの日本で791台は悲観的な販売実績ではありません。

 エスティマは、ひとつの時代を築いたエポックメイキングなミニバンだったので、廃止されるのはとても残念です。

 先の開発者のコメントにあったように、アルヴェルのプラットフォームを使って、次期エスティマを開発して欲しかったと思います。

これが次期型「エスティマ」!? トヨタが発表した次世代ミニバンを画像でチェック(40枚)

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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4件のコメント

  1. エスティマはFFになった時点で遠に幕は下ろしてるだろ
    5ナンバーサイズのエミーナ ルシーダなど乗り手の立場に立ったトヨタも遠に幕は引いてしまってるしね
    加えてこの記事の記者に申し上げたいことは、初代エスティマと2代目以降は全く別の車がエスティマと言う名だけを継承した、言うならアルファードの姉妹車と言うこと、更に掘り下げれば一世代前のウインダムなどの古い下駄を延々使い続けた客の利益ではなくトヨタに孝行する企業向けに舵を取った車であるということ

  2. 初代は、ミッドシップで世界を目指したけど、欧州では先行していたルノー エスパソの高速性能が秀逸で、勝負にならなかった。気が付けば国内専用になってしまった。
    VWもシャランを消したし。
    同じようなパッケージングの車が日本市場から消えていく、時の流れ。

    • 初代は整備性の問題から当初タイミングベルトが当たり前の時代にタイミングチェーンを採用してましたね。
      また4WDもセンターデフ式のフルタイムを採用、今の使えないスタンバイ式ではなく雪道でも安定した発進ができましたね
      しかも2WDと同じ回転半径、エンジンを中央に配置した結果のステアリング機構の自由度の賜物でしょう
      時代の流れで実用的な車が消えていくのは悲しいですよね、2代目からはFFにV6を搭載すると言う愚かな過ちをおかしましたが
      カムリプロミネントやウインダムのバランスの悪さから何も学習しなかったのでしょうかね?

  3. シャランまだ残っていたね。調査不足で、失礼。(走っているとこ見たことないけど)

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